講師派遣 トライデントデザイン専門学校

本講座は、トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科ビジュアルデザインコースの石澤広子講師より依頼を受け、ビジュアルデザインコース学生2年生を対象に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を学ぶ授業として実施したものです。

概要

派遣日時 2022年9月26日(月) 10:00-12:20
場所 トライデントデザイン専門学校
主催 トライデントデザイン専門学校ビジュアルデザインコース 石澤広子講師
対象 総合デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年生36名+講師1名
講師 富永さかえ(NPO 人にやさしい色づかいをすすめる会 代表)
目的 ビジュアルデザインを学ぶ学生にCUDの大切さを知り、今後それを生かし社会に役立つデザインをして貰うため。半期をかけてCUDを生かしたデザイン制作およびプレゼンテーションまでを行うための初回授業。
テーマ カラーユニバーサルデザインCUD(シーユーディー)
内容

講座の流れ

  1. 講義
    • 色覚の多様性理解(色弱模擬体験を含む)とCUDの知識
  2. ワーク
    • CUD配色体験
    • 各自の印刷物チェック&改善検討

内容

トライデントデザイン専門学校石澤先生からの講師依頼は4年目となりました。授業の目的は「CUDの大切さを知り、今後それを生かし社会に役立つデザインをして貰うため」と一貫していますが、授業内容は、毎回更新しています。今回はこれまで以上にデザインを学ぶ学生の授業であることを意識して、ワークの時間を多く取りました。具体的には、色弱模擬体験として、CUD支援ツールめがね「バリアントール」やアプリ「色のシミュレータ」を活用してP型、D型(色弱/2色覚)の色の見え方で、色紙50色を色の系統で5分類した後、C型(一般色覚/3色覚)の色の系統5分類とどこが違うのかを考察する時間を多く取りました。また、CUDの配色体験では、色紙を使ってC型、P型、D型のいずれにとっても見分けやすい7色(印刷を想定した日本地図の北海道地方、東北地方等7地方)を選択した後、バリアントールなどでCUDチェックしながら完成させるワークをしました。学生たちは石澤先生から、色弱模擬体験で5分類した色紙、7色の配色のチェック前、後すべてのワーク結果を各自撮影するよう指示を受けたので、授業後もワークの過程が分かるようになっています。デザイン学校の学生たちにとって、色への関心は高いにもかかわらずCUDの視点で色を考えることは、初体験です。CUDの配色を行いながらも、美しい配色、地図にふさわしい配色であることも同時に考えながら試行錯誤をする学生たちは真剣に取り組んでいました。最後に、各自持参した印刷物をCUDチェックし改善検討を行いました。こうしたワークの記憶は残り、講義で得た知識と共に今後に生かされることと思います。

授業について学生たちの感想をすべて送っていただけました。どの学生からもCUDの大切さが伝わったと感じられる感想をもらいました。一部を資料として次項に掲載いたします。(トライデントデザイン専門学校より掲載許可を得ています)

学生たちは、今後半年を掛けて、CUDを生かしたデザイン制作およびプレゼンテーションまでを行います。講師派遣は全2回で、次回は、カリキュラムの最終回で行われる制作物のプレゼンテーションにおいて、CUD の観点から評価・アドバイスを行う予定です。CUDの大切さを重視してカリキュラムに取り入れ、当会へ講師派遣依頼を継続くださるトライデントデザイン専門学校および石澤先生、そして授業を真剣に受けてくださった学生さん達に感謝しています。

学生の感想(一部)

* 以下感想は、トライデントデザイン専門学校より掲載許可を得ています。

  • この度は私たちのためにカラーユニバーサルデザインについてのレクチャーをしてくださり、誠にありがとうございました。今までユニバーザルデザインについて学ぶ機会は多くあったのですが、その中でもカラーについて詳しく勉強したことがなかったため、とても有意義な時間となりました。私の周りにも色弱で悩んでいる人は少数ですが居て、「服の選び方が難しい」や「黒板が見えにくい」などとは言っていましたが、実際にどのような風に見えているのかは知る術がなかったため、色のシミュレータやバリアントールなどを使用して体験できていい経験になりました。実際にバリアントールを使用して色紙を識別してみた時に、思った以上に赤と黒だったり緑と黄色だったりと見分けることが難しいとわかりました。真っ赤な紙が黒やグレーにしか見えなかったものは、知識として見分けにくいことは知っていたものの予想以上に分からなかったです。
    日本地図で地域ごとに色を分けるワークも、CUDにだけ配慮しすぎるとC型の人が見た時に微妙な配色になっていたり、逆に見栄えだけを気にしすぎると P型、D型の人にとって見にくいものになってしまったりと、いい塩梅を探すのがとても難しかったです。CUDがどんな場面で配慮されているかと言われたら標識や駅の路線図などは思いついたものの、ぷよぷよや UNOなどのゲームやカレンダーのデザインにまで適用されているのは思いつかなかったです。普段私たちが何気なく目にしているものでもしっかりCUDになっているものとそうでないものがあるのだなと思いました。どんなところでもっと考え方が浸透していくべきか、今回の課題を通して調査を重ね考えていきたいと思います。
    今までは自分から見た配色のバランスで作品を制作していたものの、色弱の方の視点で考えると誰もが良いと思うデザインを作ることは難しいと感じました。だからこそ、CUDをしっかり勉強させていただいた今は配色についてより深くより様々な方に配慮したものを作ろうと思いました。CUDの三原則である「見分けやすい配色」「色十色以外の情報併用」「状況により色名追加」ということを忘れずに課題に取り組みたいと思います。
  • 今回のCUDに関するレクチャーは、今後の課題や自身にとっても非常に大切な知識だと感じました。まず、自身が色弱であり、診断や自身の認識として「赤緑色弱」という言葉とその特性を知っていました。経験としても、実際に色を見間違えたり、周りと色の認識や色彩感覚が違っていたりといったことは多かったため、色覚の違いや CUDについても理解があると感じていました。
    しかし、今回のレクチャーを通して改めて知ることや、感覚ではなく理由を元に考えることができました。例えば、人間の視細胞である錐体細胞の働きが L錐体とM錐体で似ているため赤色と緑色の 2色が見分けづらいという理屈や、この赤色と緑色の違いの認識が難しい人が色覚の違いを持つ人々の大部分を占めること、その一方で少数ではあるものの、青色と黄色の違いの認識が難しい人がいることや、そもそも色の見え方のも個人差があり、一般の人や色覚に違いがある人同士でも違いがあることなど、様々なことが学びとなりました。また、色のシミュレータアプリやバリアントールを使うことで、自身の見え方とはさらに異なった色覚の違いを体感でき、自身以外の色覚の違いを持つ人の感覚を擬似的に体験できたことは、とても新鮮貴重な経験だと感じました。
    以前、自身の色覚の違いをきっかけにインタビューを受けることがありました。その際に、今回のレクチャーほどの知識があれば、自身の経験を踏まえてさらに有意義な回答ができたと思いました。CUDを手がける側としても、色覚の違いを持つ側としても、深い知識と理解を持つことは大切だと感じました。
    今回のCUDに関するレクチャーは、今回の課題だけではなく、今後の自身の生活にも大切なことであり、しっかりと理解を深めることでより良い CUDを制作したいと思いました。
  • 私は、ユニバーサルデザインについては知っていましたが「カラーユニバーサルデザイン」には今回初めて触れました。今までも、色覚多様性の方が世の中にはいて、自分達とは色の見え方が異なるという認識はありましたが、それがどのように見えるのか、どんな色が見分けにくいのかなどは初めて知ることばかりでした。
    実際に色のシミュレータやバリアントールなどを使って体験してみると話だけでは伝わりきらなかったCUDの大切さが分かりました。まず、色別に折り紙を分けた際、全く系統の違う色でも同じ色に見えてしまったり、同じ緑なのに違う色に見えたりなど、講義を聞いて頭では理解したつもりでも実際に自分の目で体験しないと分からなかったことだったのでとても参考になりました。また、日本地図を使った体験では CUDとデザインのバランスの難しさを感じました。まず、色覚多様性の方でも判別できる5色を見つけることが難しかったです。そしていくつか5色が見つかっても一般型色覚の人がみるとデザインとして綺麗な5色ではない組み合わせがほとんどでした。私は、CUDを取り入れる上で 1番意識しなければいけないのがこのバランスだと思いました。色覚多様性の方が判別できれば完璧なのではなく、一般型色覚の人が見ても綺麗な配色であって初めてCUDと呼べるのだと感じました。さらに、考慮すべきは色覚多様性の方だけではないことも意識しなければならないと思いました。高齢者の方や小さい子供まで全ての人が平等に使えることも大事なのだと思いました。このデザインのターゲットは誰なのか、それを初めに考えて制作していきたいです。
    この講義を通して私は、日常で見る商品や看板への考え方が変わりました。大手の企業で使われている国ゴやデザインはデザイン性に優れているだけでなく、CUDの考え方も取り入れられているように感じます。自分が制作に取り組む時もCUDの考えとデザインとしての配色、その 2つのバランスを意識しながら取り組んでいきたいです。
  • 「カラーユニバーサルデザインとはどのようにデザインすれば良いのか ?」レクチャーを受ける前、色のシミュレータというアプリで家の中を見てみた。こんなにも違うのかと驚いた。見続けた後、自分の目でいつもの景色を見ても、まだ目が疲れていたのか何か違和感を感じた。違うということは難しく、カラーユニバーサルデザインを学ぶことは難しそうだと思った。難しいからこそしっかり学びたいと思い、気合を入れて授業に臨んだ。特に印象に残ったことを3つ挙げたいと思う。
    1つ目は、色のシミュレータは完璧ではないということだ。色弱の人の見える世界を完全再現 しているわけではなく、このアプリは計算によって再現されたものである。あくまで、この色とこの色の区別がつきにくい、ということを示すためのものだそうだ。同じ色弱の方でも個人差があるものらしい。
    2つ目は、色の見え方に優劣はないということだ。当然、色弱とは病気ではないということは知ってた。色覚異常という言葉が使われなくなり、色覚多様性という言葉に変わったことからも明らかだ。色弱という言葉は、色に弱いという意味ではない。色による情報弱者という意味だ。色弱の方は、明度の差に敏感だそうだ。明度の違いを見分けることは、一般型色覚と言われる C型よりも得意である。それぞれに得意分野があるという考え方を知った。 しかし、95%に合わせられた色づかいばかりというため困ることが多いということが問題だ。
    3つ目は、ワークの難しさだ。色を5グループに分けようとしたが、 3グループにしか分けられなかった。バリアントールと呼ばれる色の見分けづらさを感じるメガネを使った。外してみると、同じグループに淡い水色と濃いピンクがあった。淡い水色は好きだが、濃いピンクはあまり好きでないため驚いた。見分けられない感覚を改めて感じた。日本地図の色分けはさらに難しかった。見分けがつくようにアプリや資料を使いながら工夫した。やっとの思いでなんとか並べられた。しかし、C型の人にとって見分けられるものの、目がチカチカしていて好ましくない配色になってしまった。
    カラーユ二バーサルデザインは、誰もが使いやすい色のデザインだ。誰もが楽しめるデザインにしたい。自分にない感覚を想像し、模索し続けることが大切だと感じた。

資料

以上 (2022/10/19 作成)

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