- 第1部:ビデオフォロー講座「6/25 岡部氏の講演会録画映像を観る」
- 第2部:ディスカッション 「養護教諭からの問題提起 — 学校現場の悩み事例と解決方法」
概要
イベント名称 | 第7回CUD 勉強会 第1部 ビデオフォロー講座「6/25 岡部氏の講演会録画映像を観る」 第2部 ディスカッション 「養護教諭からの問題提起 — 学校現場の悩み事例と解決方法」 |
実施日 | 2016年7月31日(日)13:00~17:00 |
場所 | ソレイユプラザなごや(なごや人権啓発センター研修室) 愛知県名古屋市中区栄一丁目23-13 |
主催 | NPO人にやさしい色づかいをすすめる会 |
参加人数 | 9名 |
参加費 | 500円 |
内容 |
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イベントの趣旨
NPO 人にやさしい色づかいをすすめる会は、2015 年の創立以来、今年2016 年4 月の学校保健安全法施行規則 の一部改正実施による、学校における色覚検査の対応、教職員が色覚について正確な知識を持ち配慮・指導を行う新たな取り組みが始まることに注目してまいりました。この取り組みがカラーユニバーサルデザイン(CUD) の推進に繋がるよう、当会として協力できることは何かと考えております。
このような中、養護教諭など学校関係者からどのような取り組みをしたらよいのか戸惑いの声が上がったため、 前回の第6回 CUD 勉強会で岡部正隆氏による講演会「色弱のお医者さんに学ぶ子どものためのカラーユニバー サルデザイン」、今回の第7回CUD 勉強会 ビデオフォロー講座「6/25 岡部氏の講演会録画映像を観る」を企画いたしました。ビデオフォロー講座のポイントは、単に本講演会参加を逃した方たちへのフォローだけでなく、 講演内容について感想や意見を述べ合うことで、講演内容の理解を深める機会にすることでした。
幸運なことに私学高校養護教諭の方(当会会員)から自校における CUD の取り組みと問題点を発表いただけることになりましたので、学校現場の CUD についてディスカッションする場を追加いたしました。このような経緯により今回の勉強会は2 部構成といたしました。養護教諭の方、参加の皆様へ改めて感謝申し上げます。
イベントの内容報告(資料1―資料3)
養護教諭からの事例発表と問題提起の概要
事例発表
ある色弱の生徒の見え方の一例。チョークの白とピンクは同じ色に見える。蛍光チョークの黄・黄緑・ 橙も同じ色に見える。そこで色覚対応チョーク青を用意し、白、蛍光チョークの黄、色覚対応チョーク青の3色は混同しないことを確認して、職員へ3色を板書用とするよう依頼した。チョークの色の見分けづらさを理解し、配慮した事例。
問題提起
- 自校で在校生全員に健康調査を実施。調査票に色弱であると記入のあった7名の生徒全員に対しヒアリングを行った。その際、合理的配慮を望む回答は帰国子女1 名のみであった。アメリカの中学時代、配慮を受けていたこと、学校生活上の困りごとを明確に回答したものであった。一方、他6名は「困り慣れているから特に配慮はいらない」「昔小学生のころ、自分の見え方について叱られた、ふざけている等言われ、 嫌な思い出がある」「担任に特に言わなくてもいい」等々の回答だった。この現状にどう対処したらよいか?
- 学校で行う色覚検査の事前説明にはどんな内容のことが必要か?
問題提起の背景:他校で色覚検査の希望をとったところクラスの3分の2の生徒(保護者)が希望した。色覚検査について説明不足で安易に捉えられた結果か。
ディスカッションを通した気づき・見えてきた課題(後日寄せられた感想含む)
- 養護教諭の方々がいかに奮闘しておられるかを改めて知った。
- もっとディスカッションの場を持ちたい、帰国子女の色弱の生徒さんからもぜひお話しを聞きたいとの思いが強く残った。
- 立場の違う人からの意見を聴き、学校がとても閉鎖的に感じられた。色覚のことも伏せる傾向。学校では生徒の個人情報はかなり厳重に扱われている。遺伝子疾患、過去の(色覚検査廃止になった)背景の件もある、また校医からの助言もあるので、かなり慎重になっていた。当事者、家族の「知られたくない」という思いが強くあると考え、デリケートな問題により一層デリケートな対応をしようとしていた。いろいろ壁はあると思うがもう少しオープンにしてはどうかと思った。
- 養護教諭のCUD取り組み事例を共有できる場をつくり、CUD を実践する仲間を増やし、学校現場の意識を高めたい。
- 色弱者に対し日本社会が生み出した無理解や差別の歴史を根強く感じる。色弱の子どもが配慮してほしいことを自ら語れる教育現場にしたい。
- 岡部講演の内容から、色弱の子どもは色のとらえ方、見分け方等の力をつけることが必要であると知った。そうした捉え方をしたことがなかったのでなるほどと思った。
- 色覚検査の意味は深く、社会は検査の意味合いを正確に理解する必要がある。
- 検査の意味=岡部講演の内容から検査のメリット・デメリットについて
- <メリット> 自分の色覚の状態を把握・理解することができる。進路を考えるうえで事前に自分なりに対処できる。
- <デメリット> 遺伝子レベルの検査である。治療で治るものではない。遺伝子検査は選択しない権利もある。色覚検査は配慮や指導とセットで行われなければ、色弱と特定された場合、デメリットが非常に大きい。
- 教職員が色覚やCUD に関し学べる機会が必要である。
- 文科省の通達では、「教職員が色覚について正確な知識を持ち配慮・指導を行う」こととしているが、現状では教職員には色覚や CUD に関する知識や情報が不足していると感じる。発表者以外でもう一人参加されていた養護教諭は、「学校でスクリーニングし色弱と疑われた場合、保護者に一般色覚とどのように違うかを伝え理解を得る必要があるが自身が良く理解できていない部分がある。また、当事者や保護者の不安を最小限に食い止めながら眼科医への受診にどのように繋げたらよいか、紹介の仕方に悩む」という。日常の学習面、生活面での配慮、指導の仕方に悩むだけではない。養護教諭や担任が、豊かな知識・情報を得ることやロールプレイングなどで子どもや保護者への対応を学べる機会が必要である。
まとめ
参加者が9名と少人数でしたが、反面良くまとまってディスカッションは円滑に進みました。発言が多く、内 容の濃いディスカッションであったと言えます。後日の感想では「有意義な勉強会であった」という声が寄せられました。
2 つのテーマを扱う2 部構成の企画でしたが、色弱の子どもの困ること、学校や家庭での色弱の子どもへの配慮の仕方について、第1 部のビデオ上映により得た知識の共有が、第2 部 養護教諭の事例発表と問題提起の理解、共感、解決策を考えるうえで、たいへん効果的に活かされた構図となりました。
養護教諭からの問題提起は複雑な要素が含まれていて解決方法を提案できるまでには至りませんでした。しかし「ディスカッションを通した気づき・見えてきた課題」から感じるのは、学校現場の混乱の実情、その大きな要因が色覚に関する知識や情報の不足、色弱の子どもへの配慮や指導についての知識不足ではないかということです。学校関係者だけでなく私たちは色覚検査の意味、色弱者の見え方理解、配慮の仕方等、多くを学ぶ必要があると考えます。
人にやさしい色づかいをすすめる会は、今後もこうした CUD に関する学びの機会を増やし、正確で最新の情報を提供できるようにする等、ニーズのあるところへの協力をしていきたいと思います。