本講座は、トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科ビジュアルデザインコースの石澤広子講師より依頼を受け、2年生31人を対象に、グラフィックデザインⅡの授業においてカラーユニバーサルデザイン(CUD)を学ぶ授業を実施したものです。

概要
派遣日時 |
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場所 | トライデントデザイン専門学校 https://design.trident.ac.jp/ |
主催 | トライデントデザイン専門学校 ビジュアルデザインコース 石澤広子講師 |
対象 | 総合デザイン学科ビジュアルデザインコース グラフィックデザインⅡの学生2年生31名+教員1名 |
講師 |
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目的 | ビジュアルデザインを学ぶ学生に CUD の大切さを知り、 それを生かしたデザインをしてもらうため |
テーマ | カラーユニバーサルデザイン~色覚の多様性に対応したデザイン~ |
内容 |
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内容
NPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科ビジュアルデザインコースの石澤広子講師より依頼を受け、グラフィックデザインⅡの授業において、2年生31人を対象に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を学ぶ授業を2回(2024年10月7日・2025年1月27日)行いました。同学科では、2018年から商品パッケージやポスター等、商業性・公共性の高いテーマのデザイン制作にCUDを意識した授業を取り入れています。当会は毎年講師派遣の依頼を受けており、2023年度にも実施し、その内容を当会のホームページにて公開しています。(https://cud.nagoya/event/reports/instructor/p20240123/)
講師の感想_1回目授業
例年1回目の授業で、学生のみなさんは初めてCUDを学び、その後4か月掛けて市場に流通している既存の商品からCUDの視点で改善する商品を選び、デザインの改善実習を行っています。しかし、今回は制作実習の対象が既に決まっていました(御月見堂様からの依頼_店舗スペースにて新しいおにぎり販売の提案)。このため、講義の終了時、早くも制作実習対象とCUD実践箇所をリンクさせた具体的な質問も出るなど、学生のみなさんの意欲を感じ、手ごたえのある授業となりました。
とは言え、CUDの実践手法に関わる知識の習得では、まずは色覚の多様性をよく理解しCUDの必要性を実感することが重要だと思っています。授業の進め方として、例年と変わらず講義の間に色覚シミュレーションツールを活用した色弱模擬体験のワークを行ったところ、学生さんたちは熱心に取り組んでいました。そして、学生さんたちが最近食べ物と色の関係を学んだと聞きましたので、本授業は人の色覚と色の関係を学ぶ授業であることを伝えました。それからCUDはイメージや装飾の色づかいには必ずしも必要ではなく、情報伝達に必要な色づかいであること、色弱者だけでなく、一般色覚者にとっても分かりやすく整理されたデザインであることを強調しました。そのうえで、具体的な手法のポイント・実践方法を解説し、CUD事例を紹介しました。本授業で得た知識が今後の制作実習および2回目授業で行われる制作物のプレゼンテーションに生かされ、そのスキルが社会での活躍にも生かされることを期待します。
講師の感想_2回目授業
2回目の授業では、学生全員がそれぞれの制作物のプレゼンテーションをスクリーンと現物で行いました。
おにぎりやお弁当をユニモールの店舗で販売することを前提とした提案で、パッケージやロゴのデザインだけではなく、商品の陳列方法、栄養分析、原価見積など、多岐にわたっていました。
この発表を受けて、カラーコーディネーター吉田名保美さん、御月見堂の代表取締役村瀬克久さん、当会の講師3人が評価、アドバイスを行いました。
CUDの観点では、色弱当事者が色の面で不自由さを感じるものは殆どなく、学生の皆さんがCUDを理解しシミュレーション画像を駆使した成果だと思いました。食料品では購買意欲を高めるためにパッケージの色で味や内容を表す事が多く、その点においても充分に考えた色づかいをしており、おにぎりの様に外観からは具材の見分けが難しいものは、アイコンで識別を助ける工夫をしていました。
授業の最後に講師から、当事者の見え方に迎合することなく重要な部分だけは全ての人に見分け易い色づかいをして欲しい旨を伝えました。
CUDへの理解と実習経験が学生のみなさんのひとつのスキルになり社会で活躍されることを期待します。
学生の感想(一部)
* 以下感想は、トライデントデザイン専門学校より掲載許可を得ています。
* 感想は原文のまま掲載しています。
- 今回初めてカラーユニバーサルデザインの授業を受けて、いかに私が色に対して無知でデザインをしているなと感じる授業でした。初めて色覚特性を持った方の意見を実際に聞くことができとても良い機会になりました。
これから先デザインをする上で自分自身の見え方だけでなく、もっと視野を広げデザインを制作しようと思いました。
明度の差などで見やすい、見にくいという意見が他の班で意見があり、私もそういったことを気をつけながら文字を配置しようと新たな発見ができ良かったです。
今回の課題は私にとってとても意味のある授業になり、今後カラーユニバーサルデザインに特化したデザインも作れたらいいなと感じました。私自身がデザインをする上で一番大切にしていることが「みんなが笑顔になれるデザイン」なので色覚特性を持ってる方も笑顔になれるデザインを目指そうと今回の課題を通して感じ、勉強になりました。
- 御月見堂様のおにぎり弁当を作る上でカラーユニバーサルデザインを考えながら制作しました。パッケージのデザインだけでなく、おにぎりの具やディスプレイ全てに CUD を考えました。今まで CUD を考えながら制作したことがなかったので、新しい大切な視点が学べてよかったです。すべての人が色の見え方に関係なく、直感的に理解できるパッケージデザインを目指しました。目指せた通りできたけどわかりやすいや見えやすいに気を使いすぎてパッケージデザインがうまくいかなかったりで難しかったです。
デザインでは色に頼る以外に大きさを工夫したり明度差をつけたりしました。そしてできるまで何回も検証しました。色々見え方を試すことや色覚異常のある友人に聞くなど様々なことをしました。作るにあたって様々なことを学びました。情報量が多すぎるとデザインが煩雑になることを実感しました。次回はさらに情報整理を意識し、より簡潔で直感的なデザインを目指したいです。
今回は素敵な経験をありがとうございました。これからも CUD を頭の片隅に入れながらデザインしていきたいです。
- 「色」が世の中でいかに大切かが、様々な観点から学べた。
1, カラーユニバーサルデザインの観点から
区別、ということが最も大切な考え方だと学んだ。一般色覚の人から見たら当たり前のように区別ができても、違いがわからない方もいるということを頭に入れておく必要がある。デザインにおいて、第三者からの視点や見方が重要とはよくいうが、こういった自分の当たり前も一歩引いて見てみる。どの色覚を持つ方でも、区別がつく色、同じ色だと色相を区別できる色、見にくい色 … 様々だが コントラストをつけたり、色相差をつけることで、誰が見ても区別ができる色に変えられる。
色覚関係なく「誰もが平等に」見えるということはこういうことだと、身をもって理解できた。
2, 色が与える意味やイメージなど、人間に及ぼす影響について
色相心理、という言葉があるように、色相が人間に与える印象は様々で、デザインにおいても必要な要素である。だが、全てをそこに頼ってしまうと伝えたいことも伝わらない。しかし、色相におけるイメージを全く使わず、カラーユニバーサルデザインのみを考える、ということでもない。個性としての色相は残しつつ、見る人全てに必要な部分は区別を大切にしたデザインを心がける。
3,「普通」は存在しないこと
世の中で言われる「普通」は「社会の中で多数を占めるもの」と考えている。しかし、一般的な普通があるだけで、全人類に共通する普通は存在しないと思っている。カラーユニバーサルデザインを学び、この考え方がより定着した。色覚に種類があると知らなかったら、色の見え方なんてみんな同じでしょ?と思うだろう、私もそうだった。だが、色覚について学んだことで、人それぞれ、というのは本当にそれぞれで「普通」など存在しない。そんな世の中だからこそ、カラーユニバーサルデザインに考慮して世の中をデザインすることで、みんなにとってすてきな社会になると感じた。
独りよがりのデザインにならないため、また、みんなにとって平等な社会にするため。そんな大切ですてきな目的があるのが、カラーユニバーサルデザイン。自分を普通だと思わず、より多くの視点からものごとを見て考えること。今回この授業を受講したことにより、自分の中の選択肢が増えたとともに、世の中のためになる「色」の役割を深く学ぶことができた。
資料
- トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年生「カラーユニバーサルデザイン~色覚の多様性に対応したデザイン~」 2024/10/07 実施授業 記録写真(PDF: 約450KB)
- トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年生「カラーユニバーサルデザイン~色覚の多様性に対応したデザイン~」 2025/01/27 実施授業 記録写真(PDF: 約550KB)
以上 (2025/02/07 作成)