NPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、トライデントデザイン専門学校からの依頼により、学生のみなさんによるカラーユニバーサルデザイン(CUD)を意識した制作物のプレゼンテーション授業において講師派遣を行いました。
概要
派遣日時 | 2023年1月23日(月) 10:00-12:50 |
場所 | トライデントデザイン専門学校 |
主催 | トライデントデザイン専門学校 石澤広子講師 |
対象 | 総合デザイン学科 ビジュアルデザインコース 2年生36名 |
講師 | NPO人にやさしい色づかいをすすめる会会員5名(色弱当事者2名およびトライデントデザイン専門学校講師1名を含む) |
テーマ | CUDを意識したデザイン制作の実践 |
内容 | 学生のプレゼンテーション |
内容
NPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、トライデントデザイン専門学校からの依頼により、学生のみなさんによるカラーユニバーサルデザイン(CUD)を意識した制作物のプレゼンテーション授業において講師派遣を行いました。2022年9月26日にも講師派遣(1回目)を実施し、その内容を当会HPにて公開しています。(https://cud.nagoya/event/reports/instructor/p20220926-report/)
1回目の授業で学生のみなさんは初めてCUDを学び、その後4か月を掛けてCUDを意識したデザイン制作実習を行いました。そして最終授業でプレゼンテーションを行い、当会が講師を務めました。
学生36名は9グループに分けられ、対象分野を決め、グループ内の4名それぞれが対象物を選びCUDを生かしたデザイン制作を行いましたが、プレゼンテーションでは、授業時間の都合上 3グループのプレゼンテーションが行われ、計12点の制作物の評価、感想、助言を行いました。授業の後半はプレゼンテーションがなかった制作物も教室内に並べられ、講師5名が任意にそれぞれの制作物について制作した学生と制作の意図、CUDの視点、質問や感想等のディスカッションを行いました。
制作物は、CUDを理解して考えられたものであると感じました。特に、薬局で目にする医薬品や化粧品、スーパーなどで販売されている人気の菓子類のパッケージなどは、学生のみなさんの身近なものを対象としていて好感を持ちました。また、防災グッズ、動物園の園内マップ、病院の館内マップ、交通機関の各種案内表示など公共施設の色づかい、文具や教材、遊びなど子どもに関するものなどについては、かなり試行錯誤しながら制作されたと感じられました。
今回の授業が、学校の講師陣とは異なる色弱当事者、CUDに詳しい印刷業者、デザイナー、カラーコーディネーターとコミュニケーションをすることで、学生にとって興味深い授業になったのであれば幸いです。CUDへの理解と実習経験が学生のみなさんのひとつのスキルになり社会で活躍されることを期待します。またCUDを授業に取り入れていただいた学校についても先進的な授業の取組みとして評価し引き続きお願いしたいです。当会の参加者も、学生のみなさんと制作物について話し合ったことや、みなさんからの当日の感想レポートの中から気づきや学びが多くあり、良い機会をいただきました。今後の普及活動に生かしたいと思います。
学生の感想(一部)
* 以下感想は、トライデントデザイン専門学校より掲載許可を得ています。
* 学校の方針により色覚異常者の呼称を使っています。
- 今回はお忙しい中お時間をいただき貴重なご意見ありがとうございました。今回カラーユニバーサルデザインを学ばせていただき、自分が思ってたよりも身の回りでは普及していないのだと思いました。私の班は病院についてのカラーユニバーサルデザインを制作したのですが、病院ではお年寄りの方や障害がある方が多いのにも関わらず、少し不親切なデザインが多くありました。館内マップからカラーユニバーサルデザインを考えると見づらいものが多くあり、張り紙などでも同様見辛いものが多かったです。私が担当したのは券売機の場所が変わったことを伝える張り紙でしたが、わかりづらかったです。館内マップと色を統一したり、文字に枠線を作ることで見やすくなるように工夫をしました。会の方がおっしゃっていました色からではなく、文字から情報を得ることが多いと言う言葉を聞き、ブラッシュアップをするべきところが多いと感じました。まだまだカラーユニバーサルデザインについて学ぶべきことがたくさんあるのだと改めて感じました。これからデザイナーとしてデザインをしていくにあたり、今回学んだ細かいところまで意識してデザインをしていくべきなのだと再確認ができました。赤や緑の文字を使用する際は見やすいよう配慮したりグラフを作る際には、ドットや罫線を使うなど少しの工夫で異常色覚の方が見やすくなることがわかりました。これからも配慮のされたデザインが世の中に溢れるほどあるようになればいいなと思います。公共のもののデザインではカラーユニバーサルデザインを意識しながらデザインしようと思います。今回この半年間でたくさんカラーユニバーサルデザインについて考え学びを得たことで、デザインに対する考えに深みが出たと思います。半年間で学んだこの知識を生かしてこれからのデザインで、色覚異常のかたも色覚異常ではない方も全ての人がわかりやすい、生きていく上で不便だと感じるデザインを減らしていけたらと思います。今回はこのような貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
- 今回実際にCUDを取り入れた制作をしてみて、初めて学んだことがたくさんありました。まず、初日にレクチャーを受けた際は折り紙を使っての演習などを通して、2つの色なら差をつけるとは簡単だろうと思っていました。しかし、実際に制作物を作り初めてみると、見分けやすいように差をつけることはできても、それが一般色覚の方から見ても美しい色の組み合わせか、元々商品が持っているイメージを壊していないか、商品棚に並んだ時にも見やすい色かなど、考えることが山程あり完成までに何回も色調整をやり直しました。最終的に色は決定しましたが、プレゼンや講評を聞いて、暗闇ではどうなのかや必要な事項は見やすい色だったのかなどまだまだ改善点はあるなと感じました。また、今回はフォントやレイアウトでも学ぶことが多かったです。初めは色や見出しの形を変えるだけのラフを作成していたのですが、いざ制作してみると意外と見出しが目立っていなかったり、商品の一番目立たせたいところが散乱したりしていてリデザインの難しさを感じました。実際に売られている商品たちは皆考え抜かれてそのレイアウトやフォントが使われているのだと思いました。この経験はこれからの自分のデザインにもいかして行きたいと思います。そして今回一番貴重な経験になったのは、直接色覚異常の方のお話を聞けたことです。制作物を作っている時は、色の判別がつけばいいと思い込んでいました。しかし、実際にお話を聞くと、同じP型の方でも色の見え方にも個人差があり、脳に入りやすい色や入りにくい色があるなど直接話を聞かないと知れなかったことがたくさんありました。また、他の班の制作物も違った角度で見ることができました。一般色覚の人が見ると何気ないことでも、裏面などの細かい配慮が色覚異常の方には伝わるんだなと思いました。私はCUDの授業を通して、自分が作っている制作物のターゲットや使用環境をもっと深く考えるべきだと学びました。今まではターゲットに合わせたデザインの雰囲気のみ考えていましたが、文字は見やすいサイズか、頭に入りやすい色か、その状況下で判断できる色分けかなど誰がどこでどのように使用するものなのか考えてデザインしていきたいです。また、闇雲にCUDを取り入れるのではなく、よりターゲットが使いやすいものを作る手段の一つとしてCUDをこれからもいかしていきたいと思います。
- 私はカラーユニバーサルデザインについて今回の課題で初めて知り、多くの気づきを得ることができました。実際に色弱の方にはどう見えているのかを、アプリやバリアントールを使って見てみて赤と緑がとても見分けづらかったり明度や彩度が同じ色は違いがなかったりなど自分が思っているよりも見え方に違いがあることがわかりました。私達のグループは遊びに関するCUDのご提案をさせていただいたのですが改善案を考えている時にアプリを通した色だけに囚われすぎて先生にこれは遊びたくならない色だと何度も指摘を受けました。見やすいことも重要だけど、そこだけに集中しすぎてゲーム本来の目的だったり楽しさを見失ってはいけないと気づくことができました。またC型の方とP型、D型の方両方に配慮した色を見つけるのはとても難しいと感じました。また今までCUDに触れてこなかったため今回いろいろな角度でデザインを見つめることができました。プレゼンしていたグループでフォントについてアドバイスされていたのが印象的で色だけではなく文字情報などの細かい部分にも配慮が必要だとわかりました。文字の周りに縁取りを付けたりフォントを少し変えるだけで私たちには些細なことでも色弱の方からしたら大きな変化になることを知って、その点で私の作品はまだまだ改善できた部分があったと感じました。また色の変更だけではなく模様を入れてみたりピクトグラムを使ってみたりすることで誰がみてもみやすいデザインにすることができると分かりました。今回CUDを学んでみて普段何気なく使っているものや見ているものにもまだ改善できる部分があると思いました。どんなところでもっと考え方が浸透していくべきかこれからも生活する中で考えていきたいと思います。今までは自分から見た配色やバランスで制作してきましたが今回の課題を通して様々な視点からデザインを見つめてみようと思いました。誰が見ても美しく見やすいデザインを作ることは難しいですがCUDをしっかり勉強させていただいた今は配色やデザインの面で様々な方に配慮したデザインを心がけたいと思いました。これからデザイナーとして制作するときにこの授業で学んだことを忘れずにいろいろな視点からデザインを見つめていきたいです。そしてこのCUDの考え方がより多くの方に知ってもらえるような世の中を作っていきたいです。とても貴重な授業になりました。ありがとうございました。
- カラーユニバーサルデザインを学んで私は、シミュレーターだけでは伝わるデザインを制作することは難しいということがわかりました。プレゼンテーションで実際に作品への講評を色覚異常者の方々からいただき色の認識、そして利便性など様々なことへの知見を深めることができました。講評の中で印象に残っていることは「青緑色と赤紫色が似ていて見づらい」です。シミュレーター越しに作品を見た時は差を認識出来ていたのでかなり驚きました。色の見え方に差が生まれたからデザインに統一を持たせるために彩度を合わせようという考えもよくなかったのかもしれません。違和感がないことに重きを置き過ぎてしまいました。一般色覚者がいくら、シミュレーター越しに色を調整して差を作っても対象者の視界で認識することができなければ意味がないのだなと感じました。色覚異常者の方に実際に作品を見てもらい意見を交わしながら制作することができたら、寄り添えたデザインになったのかもしれません。調整が必要でした。講評を得て、講義の中でも話されていた「シミュレーターが必ず正しいとは限らない、色の見え方には個人差がある」というのはこういうことかと実感をしました。同じ色覚を持つ方の視界でも度合いによって変わってしまうと言うことも学びました。「灯を消した環境では色の見え方が代わり、平常時には差を認識できる色が見えづらい」と言うご指摘をいただき、今回グループで設定したテーマとその環境に対してのシミュレーションが甘かったなと反省をしました。照明の色でも視界の情報が変わるというのに対策が取れていませんでした。ピクトグラムと文字情報で伝わることができたとしてもカラーデザインとしては失敗しているため、明度の調整、色相彩度の再設定を行い修正をしていきたいです。他の班への講評の中で、デザインの情報を得る際は色ではなく文字と図が多い印象を受けました。読みやすい書体とピクトグラムなど組み合わせを第一に考え続いて配色という流れであれば伝わるデザインができるのだろうかと考えました。今回の経験を得て私は、異なる視界でも不可なく情報を得られるデザインについて学んできたいと改めて感じました。
- 15週にわたって自分たちで 1 から考え作品を作り上げてきましたが、改めて難しい課題だったと感じました。と言うのも、色覚異常者の視点を想像すると言うことがそもそも難しかったというところがあります。色覚異常には、先天性と後天性の二種類があると知りました。先天性の場合は、生まれつき一部の色しか知ることができない。ですので、何か色の名前を言っても、その色がどのようなものか理解できない可能性があるわけです。私のような一般色覚の人間にとって、色は当たり前にある存在であることが前提ですので、色の見えない人の立場に立つということが容易ではありませんでした。それでも、色のシミュレータなどを駆使し、なんとか作品を作り上げることができました。プレゼンのメンバーに選ばれたと知った時は、かなり不安に襲われました。自信がありませんでした。ですが、実際のプレゼン時に高評価をいただき、とてもほっとしました。理解した気になっただけだったのではないか。こんなもの CUD とは言えないと言われてしまうのではないか。そういった不安がありましたが、想像し辛い中しっかり自分なりに考え、それを作品に落とし込むことができていたと実感しました。もちろん、あれで完璧なのかと聞かれるとそう言い切れないところもあります。自分はまだ CUD を完全に理解仕切れていないと思いますし、もっとやれることがあったとも思います。ただ、課題制作やプレゼンの講評を通じて、レクチャー以外でも新たな学びを得ることもできました。CUD を含め、配慮のあるデザインを完璧に考えられるようになるのはまだまだ先ですが、やっていけばどんどんできるようになっていけると思うので、今後とも頑張っていこうと思います。
- 今回、私達の班ではテーマを『学校生活における CUD』とし課題を進めて来ました。リサーチをする中で糸の色がわからないと言う書き込みを見つけました。小学校では家庭科の授業があり裁縫を行う事があると記憶しておりました。その為私は、ターゲットを小学生へと定め色間違いをなくせる CUD デザインを考えようと決めました。そして私が実際に制作したのが小学校で良く購入されている、アイセックの裁縫セットに付属している手縫い糸としつけ糸のリデザインをしました。主に糸の台紙を変更しました。無駄と感じたライン、図形を省き全体的に文字を大きくし、問題点であった糸の見分けがつかないを改善するため、カラーネームをわかりやすく入れ制作しました。実際に制作物を色覚特性の方に見て頂いた際には見やすくて良いと言っていただけました。ただ裁縫セットの中身なので他の付属物であるチャコペン等のデザインをするともっと良くなるともアドバイス頂きました。これを踏まえ、些細な配慮でもかなり変わってくる事が分かりました。私は CUD に関しての知識はほぼ無い状態での取組みだったのでリサーチや製作をし、多くの知識を学ぶ事が出来たためとても良い授業であったと思いました。
- 今回私は、色の間違いがないようにオシャレをより楽しんで欲しいという思いから、美容用品の中でヘアカラーを選択し、その中でもエンシェールズカラーバターという商品を選びました。その商品を選んだ理由は、リサーチの際に製品を実際に手にとってみて思ったことが、デザイン性を重視して白色を基調としたパッケージにしているけれど、色名の表示もわかりにくく、色覚を問わず色の判別がとても難しいと感じたのがきっかけでした。それぞれの製品が決まり、グループでデザインを制作する際に話し合ったことが、ただ色を変えるだけでなく、アイコンを使ったり、文字を使ってわかりやすく伝えたり、色を変える以外の手法でもわかりやすく色を伝えることができるデザインを作ろうということでした。そこで私はエンシェールズカラーバターの白色を基調としたデザインの中で、商品の特徴を活かしつつ、色の明度に着目してわかりやすいデザインをつくってみようと試みました。カラーバターのそれぞれの色ごとにカラーチャートのパラメータを作成し表現することで、似たような色でも色の明度をみて、色の判断ができるのではないかと考えました。そのほかにも色名をわかりやすく大きく表示したり、バーコードが何かの拍子で剥がれてしまっても、色の識別ができるようにしたり、商品そのものの特徴を活かしながら、たくさんの工夫をしました。今回、カラーユニバーサルデザインについて、自分なりに誰もがわかりやすく、使いやすいデザインはどのようなデザインなのか、そしてより色をわかりやすく伝えるためにはどうすればいいのかということを追求して、自分自身の中でもまた違った視線でデザインを制作することができて、とても貴重な経験ができたと感じました。プレゼンテーチョンでも実際に色の明度をパラメータにしたデザインをわかりやすいと言っていただけてとても嬉しかったです。これからのデザイン制作にも、このカラーユニバーサルデザインでの経験を活かして精一杯努力していきたいです。
資料
以上 (2023/02/07 作成)