講師派遣報告/トライデントデザイン専門学校(2023年10月3日・2024年1月23日)

本講座は、トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科ビジュアルデザインコースの石澤広子講師より依頼を受け、ビジュアルデザインコース2年生43人を対象に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を学ぶ授業として実施したものです。

概要

派遣日時
  • 1回目:2023年10月 3日(火) 9:45~12:55
  • 2回目:2024年 1月23日(火) 9:45~12:55
場所 トライデントデザイン専門学校 https://design.trident.ac.jp/
主催 トライデントデザイン専門学校 ビジュアルデザインコース 石澤広子講師
対象 総合デザイン学科 ビジュアルデザインコース2年生 43名
講師
  • 1回目:富永さかえ(NPO人にやさしい色づかいをすすめる会代表)
  • 2回目:NPO人にやさしい色づかいをすすめる会会員4名(講師代表:片岡晴彦/色弱当事者3名を含む)
目的 ビジュアルデザインを学ぶ学生にCUDの大切さを知り、今後それを生かし社会に役立つデザインをして貰うため。
テーマ CUDを意識したデザイン制作の実践
内容
  • 1回目:CUDの講義
    • 講義1:色覚の多様性理解(ワークショップ/色弱模擬体験)
    • 講義2:CUDの知識(ワークショップ/①CUD配色体験 ②CUDチェック体験)
  • 2回目:学生のプレゼンテーション
    • 学生の制作物に対して、CUDの観点から評価、アドバイス

内容

NPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、トライデントデザイン専門学校総合デザイン学科ビジュアルデザインコースの石澤広子講師より依頼を受け、ビジュアルデザインコース2年生43人を対象に、カラーユニバーサルデザイン(CUD)を学ぶ授業を2回行いました。2022年度にも実施し、その内容を当会のホームページにて公開しています。(https://cud.nagoya/event/reports/instructor/p20230123-report/

1回目の授業で学生のみなさんは初めてCUDを学びました。その後4か月掛けてCUDを意識したデザイン制作実習を行いました。学生43人は4人毎の11グループに分かれ、市場に流通している既存の商品からCUD視点で改善する商品を選び、各人がデザインを改善しました。

2回目の最終の授業では、制作物のプレゼンテーションを行いました。グループ毎に全員の作品をスクリーンに映して、現状と改善後を色弱者の見え方のシミュレーション画像を駆使して説明しました。これに対して当会の講師4人が、評価、アドバイスを行いました。制作物は、CUDを理解して考えられており、そのまま製品化しても良いと思えるほど完成度が高いものばかりでした。食料品では購買意欲を高めるためにもパッケージの色で味や内容を表す事が多く、学生たちは色弱者の見え方を確認して、見分けやすい色を選択していました。色だけではなくデザインでも必要な情報を見落とさないよう改善し、地下街のフロアマップでは数多くのアイコンで識別を助ける工夫をしていました。制作物は教室内に並べられ、授業の最後には講師が任意にそれぞれの制作物について制作した学生と制作の意図、CUDの視点での質問や感想等のディスカッションを行いました。

CUDへの理解と実習経験が学生のみなさんのひとつのスキルになり社会で活躍されることを期待します。

学生の感想(一部)

* 以下感想は、トライデントデザイン専門学校より掲載許可を得ています。
* 感想は原文のまま掲載しています。

  • 今回の課題を通してカラーユニバーサル、色覚異常を持つ方々の色の見え方について調べ知識を深めました。デザインにとって色という情報がどれほど作用するものか改めて実感しました。カラーユニバーサルデザインは情報がなるべくすべての人に正確に伝わることが重要なため、色覚異常の方々のみが見やすいデザインではなく、健常者含め見やすい配色、デザインにする事が難しいと感じました。デザイン性を優先すると見分けづらい、カラーユニバーサルを優先すると健常者が見た時洗礼されていない配色になってしまうなど間をとって調整することに一番苦戦しました。
    私の班は「キリン 本搾り」というチューハイの商品のパッケージをリデザインしました。使われている画像の角度や配置が似ており、背景も色の違いがあるものの、明度の差がなく、その果物の形や色も似ているためどれがどの味なのかが色覚異常者にとって判別しづらい事、他企業のチューハイのパッケージと似ている、という事を問題としました。そこで、他企業の商品と差別化し個性を立てるために写真ではなく抽象形で果物を表現しました。また、ひとつひとつ違う背景に変更し色以外の情報を入れました。
    プレゼンテーションの意見を聞いたところ、「種類別で見分けることはできるがパッと見て何味かは分からなかった」「他の商品との差別化ができている」とおっしゃていただきました。自分の制作意図が伝わって嬉しかったです。また、パッと見て何味かわかるよう文字に視線が誘導できるよう変更しようとも思いました。カラーユニバーサル、デザインに関してとても勉強になりました。今回の経験を生かして、今後のデザインにも「色のシュミレーション」を用いてカラーユニバーサルを取り入れていきたいと思いました。
  • 側面の注意書きや栄養成分表の文字が赤色よりも青色の方が見えやすいということには、注意が行き届かなかったので、勉強になりました。赤色っぽいものを使うならもう少し明るめのオレンジがかった色味を選ぶなどの工夫が必要だと覚えておきたいと思います。デザイン面や色だけに注意するのではでなく、商品を売っている企業の名前やロゴマーク、商品ブランド名などが見えにくくなってしまうと、企業様からするとあまり望ましくないものになってしまう、そのようなことにも配慮しながらデザインを考えていくことが大切だと気付きました。また、デザインしたものがどこに置かれるものなのか、「場所」のことも考える必要があることは、今後にも生かしていきたいと思います。色だけで判断が難しいものは斜線を引いたり模様を入れたり、そういった工夫などが必要なことも今後に生かしていきたいです。背景がすっきりして、文字情報だけの商品は、一見間違えにくいものだと思っていた部分があるのですが、遠目から見た時にはっきり違いが分かる方が良くて、そのために、明らかに区別できる模様を入れたり、はっきり明度差を付けるなどの工夫によって、見えやすさが大きく変わってくる。文字情報だけのパッケージは、よく見ると間違えにくいけど、遠目からでもはっきり区別できると嬉しいというお話を聞くことができて良かったです。最近では文字情報に頼ったパッケージを見ることが増えたように思いますが、より見えやすくするために、もう一工夫あると、もっと便利になるのかなと思いました。その一工夫を諦めずに考えていけるようになりたいと思います。また、区別を付けるという点を重視しすぎて、商品と全く関係のないイラストや色を使用すると、それは今度はデザイン面でふさわしくないものになってしまうので、やはり難しいと感じました。色覚特性の方でも、今より見えやすいものを、区別がつきやすいように、など、今まで深く触れたことがなかったので本当に難しかったです。当事者の方の意見を聞く機会をいただき、色のシュミレーターなどを使用しても気づけなかったこと、こうしてくれると嬉しい、など、今までにない視点からの意見を聞くことができて勉強になりました。
    この度は本当にありがとうございました。今回学んだこと、新しい気付きなどを今後に生かしていきたいです。
  • 今回、貴重なお時間をくださりありがとうございました。当事者の方々に意見を下さることはなかなかないので参考になる意見ばかりですごく学びになりました。カラーユニバーサルデザインは色彩検定などで学んではいたものの、一般の人よりも見にくい方々の視点になってデザインするというのは初めての体験でした。デザイナーとして全員が見やすく、欲しい!と思ってもらえるデザインはとても難しく、すごく大変なことだと感じました。今回見にくいパッケージを1から探してから、コンセプトを考え、デザインをしたのですが、自分が見つける範囲で、なかなか見つけることができなくて、それほど「誰もが見やすい」を考えてパッケージやポスター、地図などを考えている人が沢山いることにまず驚きました。身の回りの電車や、街中のポスターを見ても見やすいものばかりで、今まで「素敵なデザイン」だ!と街中を見渡すことはありますが、誰もが見やすいデザインを考えて見渡したことはなかったので、これからはそれも含めて素敵なデザインを探していきたいと思いました。今回挑戦した「綾鷹カフェ」の抹茶とほうじ茶と珈琲のペットボトルのパッケージデザインでは、抹茶とほうじ茶の緑と茶色の色味が P 型、D 型の方にとってすごく見にくく、今までほうじ茶と抹茶が同じように見えたことがないので、とても驚きました。いつも自分から見えている視点でデザインしかしていなく、誰もが平等に印象が伝わるようにしているつもりでいた自分がすごく恥ずかしいと感じました。今回の私のデザインは緑と茶色が絶妙に違いがある?ようなデザインをしてしまったのですが、デザインの感想を聞いた際に「これぐらいならわかる」と言っていただいたことが、当事者の方から見てここは違いがわかるのかと、すごく勉強になりました。とても学びで実際のフィルターをかけて見て確認したとしても、光の加減や置いてある場所によって結局見えづらくなってしまう、というのがすごく学びでした。これからは置いてある場所を、パッケージの大きさを含めて考えてデザインしていきたいと思いました。そして、ブランドのロゴはしっかり目立たすべきだということもすごく学びになりました。大切だとは考えていても自分のデザイン中心に考えてしまうことがあり、「このブランドだから買う」という方に寄り添えたデザインにしなけばならないと改めて感じました。今回のプレゼンで赤と黒が見にくいというのが多く言われていて、私から見た時に今まで気づかない視点だったので赤と黒の関係性を改めて考えていきたいと思いました。最後に「誰もが見やすい」というデザインでもそれに寄り添いすぎて一般の方から見て変なデザインになってしまうのもよくないので、重要なことだけ見やすくしてくれればいいとおっしゃっていて、今回の一番の学びでした。確かにパッケージを目的に購入する時もあるけれど急いでいたり、とりあえずなんでもいいと買った際に欲しかった味ではないものだったらすごく悲しいし、カップラーメンなどの食品でお湯を入れてから何分待てばいいのかをすぐわからないとモヤモヤとするので、どこの情報もわかりやすくまとめるのも重要ですが、誰もがパッと見た際にすぐわかるようなデザインが一番大切だなと今回学びました。
  • ある日有名人の方が「自分は色盲だ」ということについてインターネット上に発信しているのをみて私は初めて色覚特性を認識しました。ですがその時はその当事者の方が「この色は、こんな色に見える!」と話しているだけだったため、P型やD型T型についてはこの授業で初めて知りました。この課題に取り組む前のCUDについて実際に会の方に教えていただく機会で最初に知識として話を聞くだけでは頭が混乱していましたが、ワークショップで色紙を色のシュミレータ越しに色分けすると自分の思っていた以上に色が識別できていないことに驚愕しこの状態が日常だとしたら、不便だと感じる場面は数え切れないだろうなと感じました。また、実際に当事者の方も、インターネットで調べた際にも本人に自覚がなく、周囲の人と話す中で気付く場合が多いということを知り、自分のみていた世界が他の人には違うように見えるというのは私には興味深く感じました。たまたまC型色覚の人口が多いだけで、もしD型色覚の人口が増えたら世間の認識はC型も色覚特性という認識になるはずです。昨今ではSDGsを通してジェンダーや多様性と言った言葉が多く耳にするようになり、ひとりひとりの個性が尊重されつつあるので、色覚特性も同じように差別的な認識ではなく、「個性」として広く認識されていって欲しいと強く感じました。
    課題では綾鷹カフェの抹茶ラテとほうじ茶ラテ、急須珈琲ラテの3つの商品についてのパッケージリデザインをしました。抹茶の緑とほうじ茶の茶色が識別しづらい問題点を色以外に形を意識し制作しました。しかし、当日みんなのプレゼンを聞き、もっとシンプルなデザインの方が当事者の方々は嬉しいのではないかと感じました。複雑なデザインで瞬時に区別できないという点が私の中では盲点で、シンプルなデザインで且つ大切な情報は大きく表示することが大切であることがわかりました。また、当事者の方のお話の中に、配慮する際明るい場所で見ても暗い場所で見た時、ライトが当たった時、できるだけ同じように見えなければ配慮したとは言えないということを学びました。今回の課題を通してだれかのためにデザインをする大切さややりがい、新たな視点を得ることができました。これからの課題や社会に出た後でもなにかデザインをする際はCUDも視野に入れ、完璧に同じに見えなくても配慮する気持ちで取り組んで行きたいと思います。この度は貴重な機会をありがとうございました。
  • 最初に「人にやさしい色を進める会」の方の授業を聴いた時に、CTDP のそれぞれの型で見え方がこんなにも変わってくるんだなと一番に感じました。C型の私達でも一人一人また細かく色が異なって見えるとは色彩の授業で学んでいたので、今回より深く知ることができ視野が広くなりました。実際に、色彩特性の方が見づらい商品を探すところから制作が始まりましたが、この時点で現代はちゃんと全ての方々が使えるように作られている商品が多い為ので、なかなか探すことに苦労しました。私達の2班では、ローソンの牛乳パックの改良商品を作ることに決まりました。これはインターネットで探していて、実際に色覚特性の方が見にくいといった意見やデザイン自体が牛乳に見えないという意見から決まったものです。プレゼンで見て頂いた方にも実際のローソンの牛乳は見えづらいとのご意見を頂いたので、改良商品としてはいい素材選びになったのではないかと思いました。改良商品を作るにあたって、私が一番に気をつけていたことは、色覚特性の方にも見やすい色にすることです。これがこの授業の一番の肝の部分なので、そこからズレて行かないように気をつけました。牛乳が2パックあって、成分無調整牛乳が水色、低脂肪乳がピンク色で分けられたデザインになっていました。改良商品では、低脂肪乳のピンク色をオレンジ色に着色しています。次にデザインを見やすいものにしようと意識しました。実際のローソンの牛乳のデザインは、nendoの佐藤オオキさんという方がデザインされたもので、日常的に溶け込むような優しいデザインを心がけておられました。私も見ていて可愛らしいデザインで女性の方の人気は高そうなデザインだなと感じました。ですが、インターネットで調べた情報の中では、「ローソンの瓶のイラストが牛乳に見えない」、「文字が見えづらい」との意見があったので、改良商品ではその問題点を解決したものを反映させようと、瓶のイラストを牛のイラストに、また小さい文字を大きくし配置を調整しました。原寸で商品を作る時には、硬い紙の素材を使ってしまい、うまく作ることができませんでしたが、これから原寸のパッケージを作る際の良い失敗になりました。プレゼンテーションでは他の商品を作っている班のものを見てデザイン自体の勉強ができたので、良い学びの場を設けて頂いたことに感謝しています。色覚特性のデザイナーの方は色の見づらさだけではなく、デザインのこともアドバイスやお褒めの言葉をおっしゃられていたのでとてもためになるなと感じました。今回の制作を振り返ってみて、グループ活動ですが、個人の作業によって作品のクオリティが上がっていくのがとても楽しく思いました。さらに、情報収集からなので自分自身の感性が滲み出る作品になったと感じます。次回、個人制作をすることがあったら、情報収集を重点的にやってみようと思います。そうすることで、作品に深みが増すことを改めて感じました。カラーユニバーサルデザインに関する知識を蓄えて、さらにパワーアップした作品が作れるように努力していきたいです。

資料

以上 (2024/02/03 作成)

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