令和4年度 (2022年度)「カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業」事業実施報告

今回で第3弾となる2022年度愛知県委託事業であるカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座を実施しました。

概要

事業名 カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座
委託者 愛知県(福祉局福祉部障害福祉課)
実施講座 実施日時 実施会場 参加人数
計122人
2022年11月10日(木) 10:00~12:00 刈谷市役所 701会議室 10人
2022年11月15日(火) 14:00~16:00 あま市甚目寺公民館 講義室3 8人
2022年11月30日(水) 10:00~12:00 春日井市役所 8階802会議室 19人
2022年12月6日(火) 10:00~12:00 豊川市役所 本庁舎3階本33会議室 19人
2023年1月25日(水) 14:00~16:00 愛知県自治研修所 7階大会議室 66人
(内訳:会場参加者36人、WEB参加者30人)
講師
  • 富永さかえ(第一部:講義担当)
  • 三浦均、林羊歯代(第二部:ワークショップ担当)
  • 石川裕一、片岡晴彦,近藤康一、近藤俊郎(色弱当事者スタッフ)
目的 出前講座による講義とワークショップを通して色覚の多様性について理解を深め、カラーユニバーサルデザィン(以下「CUD」と称す)の必要性を認識するとともに、その普及促進を目的とする。
内容

講座は第一部の講義と第二部のワークショップで構成されている(各60分で計2時間)。


○ 第一部:講義「色覚の多様性とCUDの基本的な知識を伝える」(5会場共通)

  1. 色覚の多様性について
  2. 色弱者の見え方の特徴(当事者による解説)
  3. 色弱模擬フィルタ(バリアントール)をかけて50色の色紙を5種類に分けるワーク(色の見分けにくさの体験)
  4. CUDの事例および具体的手法

○ 第二部:ワークショップ(5会場共通)

  1. 誰にでも見分けやすい配色の実践(色紙を使って5色の配色を考案する個人ワーク)
  2. 発行物のCUDチェック(受講者が用意した自治体発行の印刷物等をシミュレーションツールや色弱当事者の実見によって確認し合うグループワーク)

  • 企画としては、後半のワークショップは上記の他にPCを使ったプログラム(OfficeツールによるCUD対応の文書作成ワーク)を用意し選択制とした。

○ ワークシートとアンケートの記入および講座のまとめ

まとめ

カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業について

本事業は、誰に対しても見やすく分かりやすいデザインの普及を目指し、色覚の多様性とCUDについての知識と理解を深めることを目的として、愛知県が企画した委託事業です。今回はカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第3弾となります。

2018年2月に県の福祉局福祉部障害福祉課が「すべての人にやさしい情報を届けよう――視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」を発行し(https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/3456.html(外部サイトに移動します))、それを機に2018年2~3月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及セミナー(岡崎市、名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20180228/)が、次いで2018年12月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及ワークショップ(名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20181217/)、そして2019年10~12月にはカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第1弾として「学校のカラーユニバーサルデザイン推進支援講座」(半田市、東栄町、愛西市、豊田市、刈谷市)が実施されました(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20200315-aichi2019/)。

第2弾は 2021年11月~2022年2月(公募によって選定された岡崎市、豊田市、西尾市、北名古屋市と犬山市の市役所職員対象) (https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20220815-aichi-caravan2021/)。

第3弾の対象者も公募によって選定され、刈谷市、あま市、春日井市、豊川市の各市役所職員と愛知県職員の方々で、幅広い部署から計122人の参加がありました。

講座内容

講座は、講義とワークショップの二部構成です(各60分、講座の様子については、添付資料「CUD推進支援講座2022_記録写真(PDF、約1.7MB)」を参照)。

前半の講義では、色が見えるしくみ、色覚の多様性とCUDの実践的な手法についてスライドを示しながら解説しました。講義のなかほどに、色弱模擬フィルタ(バリアントール)をかけて色紙を5つに分類し、色の見分けにくさを実体験するワークと、さらに色覚タイプの異なる色弱当事者2人の談話を入れることで、CUDの必要性を実感できるように工夫しています。参考資料として、愛知県障害福祉課発行の「すべての人にやさしい情報を届けよう—視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」と「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットガイドブック(第2版)」等を参加者一人ずつに配付。

後半のワークショップでは2種類のワークに取組んでもらいました。一つは色紙を用いて誰にとっても見分けやすい配色を考える個人ワーク、もう一つは参加者が所属する部署が作成・発行した印刷物等をCUDの視点から見直すグループワークです。配色の考案は、用途も合わせて考えると難易度はやや高く、前半の講義で得た知識がうまく活かされた事例を皆で共有することで有効性が保たれた感があります(時間が十分にないと、単に5色を選んで終わる可能性がある)。続いてのワークは、シミュレーションツールを用いて印刷物等に見分けにくい色がないか確認したり当事者から直接話を聴き、問題があれば講師や当事者とともに改善策を議論するものです。いずれの会場でも熱心にグループで話し合う姿が多く見られました。

評価

講座に対する評価は、講座終了時に実施したアンケート結果から、いずれの会場も概ね良好であったことがわかります(添付資料「2022CUD推進支援講座アンケート集計結果報告(PDF、約1.2MB)」、3~4頁参照)。アンケートの問3「今回の推進講座は、あなたにとって有益でしたか」に対し、参加者全体の82%が「ひじょうに有益だった」、15%が「まあまあ有益だった」と回答しており、両者を合わせると97%になります。このように高い評価を得た理由は、わかりやすい講義、色弱模擬フィルタ(バリアントール)による色弱者の色の見分けにくさの疑似体験と色弱当時者との直接対話による気づきの大きさにあると思われます。特に色弱当事者との交流については、これまで意識しなかった課題に気づくことができたし、色の見え方について具体的な話が聞けてひじょうに勉強になったとの声を多くいただきました。具体的にどういった声があったかについては、後述「参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)」をご覧ください。

リフレクション

講座全体の振り返りとして、われわれ講座実施者が出した意見・感想のいくつかを以下に示します。最初の感想は、今回初めて参加した色弱当事者の声です。

  • 会場参加者の多くが、CUDの基礎を理解され、CUDに配慮した資料を作りたいという思いを持たれていることが感じられ、よかった。バリアントールや色のシミュレータを既に使われて、資料作りに活用されていることもわかって、今後の進展に期待をもった。少なくとも愛知県では、CUDが普及していくように思えた。制作者の色づかいの意図と、当事者の見え方・感想をマッチングさせる機会を設けることが、CUDに配慮した社会に近づく一つの取り組みかもしれないと感じた。当事者としても、有意義な時間だった。
  • CUD推進支援講座としては、短時間で盛りだくさんの講座ながら、ワークも講義も一定程度成果があったと感じる。根拠はCUDの必要性を理解でき、CUDに取組みたいとする記述が多く見られたことである。特に、当事者と一緒に実際に印刷物を見ながら対話する経験が有効だったと感じる。今後CUDの実践においては、バリアントールなど用途に応じたCUDチェックツールを活用しながら、さらに幅広いCUDの手法を試し、それらを使いこなしていく必要がある。そのためには、今回だけの講座では不十分で、今後も色弱当事者を交えた対話を含めた、より実践的なCUD講座の継続が必要だろう。
  • オンライン形式の講座でワークショップを行うことの限界を感じた。県から派遣されたシステムに詳しい職員の方に、話すときはマイクの前でと何度も言われたが、会場を移動しながら話さねばならない場面も多い。少なくともその音声を拾ってリモートでの参加者に届ける通信環境が必要。あるいは、もうひとりリモート参加者対応の講師を立て、マイクの前で会場と同時にワークを行ってもらう等の方法もあるかもしれない。いずれにせよオンラインでの講座は、これからの時代一般化するであろうから、対応できる手立てを考えたい。

以下は3つ目の意見について補足です。
最終回の愛知県職員対象の講座は、県からの要請で対面とオンラインのハイブリッド形式で実施でした。オンライン参加者には事前に資料を送付し、ビデオ会議アプリケーションWebexを使って(県指定)参加してもらいましたが、ワークショップをハイブリッドで実施するにはハード面の環境整備と相応のスキルが必要であり、残念ながら多くの課題を残す結果となっています。後日回収したアンケートでは「現地でのワーク時間帯に放置される時間があったため、リモート参加者を巻き込んだ講座内容にしてほしかった」や、「講義内容は興味深かったが、内容が聞き取れない部分が多く残念だった」等の声が複数見られました(添付資料「2022CUD推進支援講座アンケート集計結果報告(PDF、約1.2MB)」、11~12頁参照)。オンライン形式の講座は、より多くの方に参加機会を提供できる利点があるため、今後も需要がある限り対応したいと考えており、スキル向上が課題です。

参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)

アンケートの問5「その他の感想(本日特に印象に残ったこと、疑問をもたれたこと、今後どのような講座があればよいか等、自由にお書きください)」に対し、今回も多くの感想や意見が寄せられました。会場ごとにほぼすべての記述を掲載した報告書を添付していますので、ぜひそちらもご覧ください(添付資料「2022CUD推進支援講座アンケート集計結果報告(PDF、約1.2MB)」参照)。

以下に、寄せられた感想の中から、本講座の有用性を具体的に示しているもの、色のみに頼らない手法への気づきに触れているもの、そして今後CUDの普及活動の在り方を探るうえで参考となるものをいくつかご紹介し、まとめといたします。

  • 学校の委員会や係活動でポスターをつくったりする時があります。背景が白のときは蛍光の色はうすいので文字などに使わないようにしたりしています。ですが、色弱の方だと赤が黒に見えたりしてしまうと聞いたので、黒い文字の中に赤い文字を入れても、本当に伝えたい情報が平等に伝えられないという状況になってしまっていたことが分かりました。次からは、みんなに本当に伝えたい情報が伝わるように太くしたりしたいです*。

    (*この記述は、市役所で就業体験中であった中学校の生徒さんによるものです。講座実施日と就業体験日が重なり特別参加されました。若い方のこうした言葉を読むとおおいに励まされます。)
  • パワーポイントのスライドでご講義頂いた内容が、とても整理されていて分かりやすかったです。特に、色の扱い方について、実践的な工夫や配慮方法をご紹介頂いた部分が勉強になりました。配布資料に同様の内容が入ってはいましたが、パワーポイント資料も併せて頂けたら嬉しかったなと思いました。また、色のシミュレータを使用した体験や当事者からどう見えているのか、直接言葉を聞ける機会があったことは、より実感を持って理解を深めていくことに役立ちました。今まで、「強調・アピール=赤色」という思考があったので、必ずしもそうでないことが知れて良かったです。また、黄色は活用しやすい色なのだなと、改めて実感が深まりました。今回の研修を通して、色の用い方とそれを考えるポイントについて様々なヒントが得られました。今まで以上に色について丁寧に検討する機会を持っていきたいと思います。ありがとうございました。
  • 強調色としてよく使用される赤が背景色によっては埋もれてしまうのとがメガネ(バリアントール)で体験できたことはよかった。ただ、「赤」を「青」に変えてしまって一般の人の注意を引かなくなって意味をなくしては、本末転倒となるケースもあるとの先生のお話が印象的だった。同じ「赤」でも明度や彩度、白抜きなど工夫し、みんなに分かりやすいものになるのが大事なのですね。
  • まず色弱の方がどのように色を見ているのか、判断しているのかということが聞けましたし、実際に自分が体験して、今後の自分の行動を変えていかなければと感じました。資料を作成するときに配色のきれいさを意識していましたが、今後は研修の内容を取り入れていきたいと思いました。
  • バリアントールで今まで話に聞くだけだった色弱の見え方を実体験できたのがとてもよかった。また、当事者の方の見え方もフランクにお話いただけて、より興味を持つことができた。色弱の方が分かりやすいデザイン、色使いと、C型の自分が素敵だと感じるデザインと両立させるのがとても難しいと感じた。
  • CUDの必要性は以前から知っていましたが、普段の業務ではそれを意識せずチラシ、印刷物を作成していましたので、今回の講座を受講してCUDの重要性を認識することができました。色彩に頼りすぎず、文字や記号を併用してデザインを作っていけば、誰が見ても分かりやすいものを作れるのではないかと思いました。
  • 色弱という一般の方には説明を行うことが難しい点について、実際にポスター等を使用し、また色弱者の方の意見を伺いながら経験できたことは非常に有益だった。区別しやすい色の組み合わせやフォント、色名を書くといった簡単にできる対応一つで色弱の方にとっても分かりやすい資料になることがわかったのは良かった。(今まで色弱の方への対応は中々難しい印象だったので・・)今後資料を作る機会があれば今日の講座を生かして誰でも見やすいものを心がけていきたい。
  • 破線や斜線など、「色以外の方法により色のちがいを表現する方法」があることに気づいた。また初めて会う人、まだ出会ってまもない人などが色弱者である場合に、本人が言わなくても「色弱者かも?」と気がづける方法があれば、聞いてみたかった(あれば)。
  • CUDとして、色だけでなく、色以外(番号等)でも認識できるようにすることが有効だと分かった。文章中に強調したい部分を赤色で表示することが多かったが、分かりにくい方もいることが分かった。CUDを意識した上でものづくりをしていくことも大切だと思いました。よって、研修対象も建物を建築する部署へ広げてもとても有益な講義になると思いました。
  • 今日のCUDの講座は半日ではなく一日コースでじっくり学べる機会があればと思います。又、私は大学に勤務していますので、学生にも是非CUDの考え方を知ってもらいたいと思いました。ありがとうございました。

資料ダウンロード

以上 (2023年9月3日作成)

追記

令和5(2023)年度「カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業」事業実施団体として委託されました。案内ページはコチラからご覧ください。 (2023年9月7日追記)

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