カラーユニバーサルデザイン(CUD)の視点で気になる色使いの対象を観察・チェックする会員限定の活動「第4回CUDチェック会_JR新型車両特急ひだ号を見に行こう!」を開催しました。
「CUDチェック会」の名称に関してお知らせ
2017年より単発的に実施してきました過去3回のCUDチェックイベントを、一つの継続活動として捉え直すことになり、今回を第4回としております。
具体的には以下のとおりです。
- 第1回 CUDチェック会
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街のCUDチェックツアー001――名古屋駅バスターミナル
実施日:2017年9月16日
https://cud.nagoya/event/reports/cud-check/p20170916-cud001/ - 第2回 CUDチェック会
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街のCUDチェックツアー002――名古屋市科学館
実施日:2018年10月13日
https://cud.nagoya/event/reports/cud-check/p20181013-cud002/ - 第3回 CUDチェック会
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第1回CUDチェック会―筆記具(ZOOMオンライン開催)
実施日:2021年6月5日
https://cud.nagoya/event/reports/cud-check/p20210605-cud1/
なお、名称と連番表記は「第4回」のイベントから用い、過去3回のイベントの名称そのもの(当会サイト内の過去の個別のタイトル表記)の変更は行いません。
イベント概要
イベント名称 | 第4回CUDチェック会_JR新型車両特急ひだ号を見に行こう! |
開催日時 | 2023年6月24日(土) |
場所 | JR新型車両特急ひだ号車内およびJR岐阜駅構内 |
主催 | NPO人にやさしい色づかいをすすめる会 |
参加人数 | 7名(P型/D型:5名、C型:2名) |
内容 | 色弱者と一般色覚者が合同で、JR新型車両特急ひだ号車内およびJR岐阜駅構内案内表示等をCUDの視点で観察する。 |
使用ツール | 「チェック用資料」(案内表示等のプリント資料:添付資料1) |
記録 | 参加者が個々に写真撮影し、後に必要に応じて共有する。 |
イベント趣旨
NPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、2017年よりカラーユニバーサルデザイン(CUD)の視点で気になる色使いの対象を観察・チェックするフィールドワークや日常の身近な製品のチェッチェックを合計3回行ってきました。こうしたCUDチェックイベントのポイントは、色弱者と一般色覚者がどんな些細なことであっても、感じたことを感じたままに言い合うことです。そこにはCUDばかりでなく、「すべての人にとってやさしいユニバーサルデザインへの工夫がこんなところにある!」といった発見も含まれています。それらを記録し、イベント後もほんとうに改善が必要なのは何か、それを決める基準とは何か、そしてどのように改善したらよいのか等を丁寧に議論していきます。その議論の末にどうしてもここは改善が必要となった問題に対し、改善の具体的な方法を探り、しかるべき相手に提案していくことも視野に入れています。そのためにも、私たちはまずどのような問題があるのかを、多くの人に知っていただくことが大切だと考えています。
4回目となった2023年6月は、JR新型車両特急ひだ号を対象として実施しました。この車両は新型ハイブリッドシステム採用のHC85系で、車内設備はバリアフリー・ユニバーサルデザイン対応となっています。そして、車内表示器のフルカラー液晶ディスプレイ、車外表示器のフルカラーLEDディスプレイは、どちらもカラーユニバーサルデザイン認証を取得しています。
JR東海NEW特急ひだバリアフリー設備
https://market.jr-central.co.jp/zairai/hc85/newtrain/train-navi/equipment/
当日は、JR名古屋駅ホームにてひだ5号到着時、車外表示器を観察した後に体験乗車し、JR岐阜駅までの間、車内表示器を観察、下車後は、構内の案内表示を観察して回りました。
イベント内容報告
ここでは、参加者を対象としたアンケート結果(添付資料2)の概要と、アンケートQ2の自由記述回答からピックアップした「JRの車両およびJR岐阜駅構内を見学し、CUDの視点から改善が必要と感じたこと」について報告します。自由記述で述べられているのは、参加者の個人的な経験に基づく意見です。この報告書では、これらの意見のなかから、複数人から指摘があった対象について取り上げます。
アンケート結果の概要
参加者に対するアンケート調査(添付資料3)では、以下4つの問を設定し、後日メールにて回答を送ってもらった。参加者7人のうち6人から回答があった(回答率:86%)
Q1:本日の「JR新型車両特急ひだ号を見に行こう!」はいかがでしたか?(1つ選択)
Q2:JRの車両およびJR岐阜駅構内を見学し、CUDの視点から改善が必要と感じたことはありますか?
Q3:ツアーに参加した感想を自由にお書きください。
Q4:今後どのような企画(今回のようなCUD事例を見学するツアー、講演会やワークショップ等)を希望しますか?
Q1では回答者全員がひじょうに有意義だった、有意義だったと回答しており、ひとまず成功と言える。
Q2には全員が回答を寄せた。工夫され分かりやすかった点についての記述と、改善点、気づいた点を各1点報告する。
工夫され分かりやすかった点および改善が必要と感じた点、気づいた点
次の点で工夫され分かりやすかったという意見があった。
・JR岐阜駅ホームに設置されている非常停止ボタンの色(黄と赤)やボタン周囲のサインはひじょうに見やすくできている。(図1)
・HC85系車内行先案内液晶表示は明暗がしっかりしており見やすい。(図2―動画)
一方、次の点で改善が必要とされた。
・JR岐阜駅ホームに設置されている非常停止ボタン上部に貼られた注意書きシールの色づかいの中で、地色が黒で赤文字の2行「ボタンを押した場合は、速やかに乗務員または駅員までお知らせください」はCUDの視点からNGの典型である。赤文字は橙に寄せ明るくするとよい。(図3)
また、次の点で気づきがあった。
・JR岐阜駅ホーム発車案内電光表示、JR岐阜駅構内改札前発車案内表示の3色は見分けにくい。3色が流れる表示になると色分けの意味が伝わりにくい。文字3色をそれぞれ見分けやすくする必要があるのだが、そもそも多色を用いる必要があるのだろうか。(図4ー動画)(図5)
まとめ
参加者満足度は高く、ひとまず「第4回CUDチェック会_JR新型車両特急ひだ号を見に行こう!」は成功したと考えます。当会は新型コロナ感染症の影響で3年以上リアルな集会開催を自粛してきましたので、フィールドワークは久しぶりでした。このため、第4回は会員同士が以前の感覚を取り戻し、こうした活動を再開する第一歩と位置付けて行った経緯があります。色弱当事者と一般色覚者が同時に現地で観察し、当事者から、不便に感じるところやカラーユニバーサルデザインのあり方について、直接聴いて学び、語り合う貴重な活動になりました。しかし、一方で、現地施設担当者の理解と協力を得た、チェック評価(意見)を生かす活動も重要です。今回はこちらの活動まで進めなかったことが大きな反省点です。次回以降のフィールドワークでは両者を満たす形にしたいと考えます。
添付資料・参考図
添付資料
- 添付資料1:JR新型車両等チェック用資料
- 添付資料2:アンケート集計報告
- 添付資料3:アンケート用紙
参考図
図1:JR岐阜駅ホームに設置されている非常停止ボタン
図2:HC85系車内行先案内液晶表示
図3:JR岐阜駅ホームに設置されている非常停止ボタンシール
図4:JR岐阜駅ホーム発車案内電光表示
図5:JR岐阜駅構内改札前発車案内表示
以上 (2023年7月26日作成)