ものづくり企業やデザイナーが、カラーユニバーサルデザインの視点を持って製品開発に取り組んで頂けるよう、体験型セミナーを実施。
概要
イベント名称 | ワークショップ+セミナー ―豊かな社会を創る―ものづくり、サービスを深めるカラーユニバーサルデザイン |
実施日 | 2017年11月21日(火)16:00~19:00 |
場所 | クリエイティブビジネススペース コード 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄三丁目18番1号 ナディアパーク・デザインセンター4F |
主催 | NPO 人にやさしい色づかいをすすめる会/クリエイティブビジネススペース コード |
後援/協力 | 名古屋市工業研究所・(公財)名古屋産業振興公社/(株)国際デザインセンター |
参加人数 | 26名 |
参加費(資料代) | 500円 |
内容 | ものづくり企業やデザイナーが、カラーユニバーサルデザインの視点を持って製品開発に取り組んで頂けるよう、体験型セミナーを実施。
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使用ツール |
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セミナーの趣旨
NPO 人にやさしい色づかいをすすめる会は、2017 年度から製品やサービスなどの作り手の方たちが色覚の多様性に配慮したものづくりをしていただくことが、カラーユニバーサルデザイン(CUD)推進に大きく繋がるとして、ものづくり企業やデザイナー向けに CUD 普及啓発を積極的に始めました。
2017 年 6 月、中小企業の方々の生産技術の向上、研究開発などの支援業務を行う名古屋市工業研究所主催 CUD セミナーにおいて協賛する機会がありました。これがきっかけとなり、企業やクリエイターの付加価値のある事業創出のための支援を行うクリエイティブビジネススペース コードからも CUD 普及の賛同をいただきました。それがコードとの共催セミナーの企画・実施というかたちとなりました。
今回のセミナー実施につきましては、CUD 導入企業より事例プレゼンテーションの講師派遣にご協力いただきました。また、後援・協力の各種機関からも開催案内をしていただく等、多くの外部機関のご理解とご協力に対し改めて感謝いたします。
セミナーの内容報告
ここでは、今回のセミナーの中心にしたワークショップメニューと、参加者を対象としたアンケート結果の概要について報告します。尚、アンケート結果の概要では、自由記述回答形式で寄せられたご意見・ご質問等にも触れますが、記述はどれも興味深いので、全ての自由記述を含めた別添のアンケート結果報告もぜひご一読ください。
ワークショップメニュー
No. | ワーク名 | 内容 | 目的 |
---|---|---|---|
ワーク1 | 色カテゴリー分類の多様性 | 色票をスクリーンに提示し、参加者に、色票をどこで分類するか挙手で問う&理由を聞く。 | 人によって分類する位置が違うこと、色知覚の違いがあることを認識する。 |
ワーク2 | CUD化されたものと、そうでないもののどちらを選ぶか | CUD化しているものとしてないものを提示し、参加者に、どれを選ぶか挙手で問う&理由を聞く。 | 設計思想を知る。 |
ワーク3 | 色を分類する | バリアントールを装着して、50色の色紙を似た色ごとにグループ分けする。 | 色弱者が色の分類をすると一般色覚者とどのような違いがあるかを体験する。 |
ワーク4 | 配色課題 | 課題に添って配色しシートに色紙を貼る。バリアントールでチェックし、必要に応じて配色変更する。 | CUDのデザイン手法を体験する。 |
その他 | 印刷物、チラシ等をバリアントールを装着して見る。 |
ワーク1 | |
---|---|
ワーク名 | 色カテゴリー分類の多様性 |
内容 | 色票をスクリーンに提示し、参加者に、色票をどこで分類するか挙手で問う&理由を聞く。 |
目的 | 人によって分類する位置が違うこと、色知覚の違いがあることを認識する。 |
ワーク2 | |
ワーク名 | CUD化されたものと、そうでないもののどちらを選ぶか |
内容 | CUD化しているものとしてないものを提示し、参加者に、どれを選ぶか挙手で問う&理由を聞く。 |
目的 | 設計思想を知る。 |
ワーク3 | |
ワーク名 | 色を分類する |
内容 | バリアントールを装着して、50色の色紙を似た色ごとにグループ分けする。 |
目的 | 色弱者が色の分類をすると一般色覚者とどのような違いがあるかを体験する。 |
ワーク4 | |
ワーク名 | 配色課題 |
内容 | 課題に添って配色しシートに色紙を貼る。バリアントールでチェックし、必要に応じて配色変更する。 |
目的 | CUDのデザイン手法を体験する。 |
その他 | |
印刷物、チラシ等をバリアントールを装着して見る。 |
アンケート結果の概要
参加者に対するアンケート調査では、以下 5 つの問を設定して調査票を配布し回答をしてもらった。参加者 26 人のうち 22 人から回収した(回収率 84.6%)。
Q1. 本日のワークショップとセミナーはあなたにとって役に立つ、関心が持てる内容でしたか。それぞれについてお答えください。ワークショップとセミナーについて、ご意見・ご質問を自由にお書きください。
Q2. あなたは CUD についてご存じでしたか。
Q3. あなたが所属されている組織で、CUD の取り組みはなされていますか。
Q4. CUD の取り組みを実施する際に、ハードルとなっている(なりそうな)ことは何だと思いますか。(複数回答可)
Q5. 今後、CUD に関するワークショップとセミナーで取り上げてほしい内容はどれですか。(複数回答可)
Q1 では回答者全員が、それぞれについて役に立つ、関心がもてるワークショップとセミナーであったと回答しており、ひとまず成功と言える。Q1 の最後では、自由記述形式でワークショップとセミナーについて意見・質問の回答が多く寄せられた。その多くがバリアントールを使用したワークショップとセミナーとのセットが判りやすく、理解できて良かったという意見であった。また、当事者の方からの見え方、困っている事、改善をしてほしい事などの声を聞きたい、今後の仕事で CUD を活かしたいなどの意見も多く見られた。
Q2 で最も多かったのは、CUD についてある程度知っていた(13 人)、次いで聞いたことがある(5 人)であった。よく知っていた(1 人)を含めると、CUD の存在はある程度認知されている結果となった。しかし今回はじめて知った(3 人)が、全体の約 15%を占めている。これは、デザインの作り手側の CUD 認知度として決して無視できない数字である。
Q3 には 19 人が回答を寄せた。このうち、CUD に取り組んでいると回答した(6 人)内容は、行政に関連するコンテンツ制作には最低限配慮しているや、行政刊行物への指摘があり、公共の情報提供において取り組まれていることを示している。その特徴は、色に特化せず UD、MUDとして取り組んでいるということであった。(メディアユニバーサルデザイン。色弱者だけでなく、高齢者、外国人なども対象にした色・文字フォント・配置にも配慮したメディアにおけるユニバーサルデザイン。)その他の内容として、学生にも CUD を意識して作品を作らせる授業を組んでいるというものや、ナースコールという具体的な製品・システムの取り組みもあった。回答では、必要性を感じるが実施には至っていない(8 人)、取り組んでいない(5 人)となっており、取り組んでいないが全体の約 70%を占めている。
Q4 では複数回答可とした。CUD の取り組みを実施する際のハードルは、CUD について学ぶ機会がないや、方法が適切か否か確認する術がないが全体の約 80%となっている。その他のハードルとして、取引先の理解、費用、時間・スケジュール面、デザイン的に魅力的な制作物になるかどうかという回答もあった。
Q5 でも複数回答可とした。今後のワークショップとセミナーで取り上げて欲しい内容で最も多いのが、CUD の実践事例紹介、続いて、CUD 推奨配色セットを使った実践練習、色弱者の見え方(当事者による講演)、CUD に関する海外事情などである。どの項目も満遍なく回答されている。
まとめ
セミナー参加者全員の満足度は高く、CUD の視点を具体的に示せたので、ひとまずワークショップ+セミナー「―豊かな社会を創る―ものづくり、サービスを深めるカラーユニバーサルデザイン」は成功した、手応えのある成果を出せたと考えます。例えば、アンケートの自由記述に次のようなご意見がありました。「CUD にあまり関心がありませんでしたが、セミナーで話を聞き,大変重要だと思い興味を持った」というご意見は、セミナー参加以前と以降とではデザインの送り手としての意識を大きく転換していただけたことが伺えます。デザインの送り手側にも、CUD 取り組みへの潜在的欲求を感じます。また、「CUD を考慮しつつも、一般の見え方でも美しいデザインをしようと思う。」「これからは色弱の方の立場も配慮して仕事をしてきたい。」というご意見は、今回のセミナーの趣旨である「ものづくり企業やデザイナーが、カラーユニバーサルデザインの視点を持って製品開発に取り組んで頂けるようにする」をクリアーしたことを意味しています。
しかし、活用いただくために必要な CUD 情報の供給不足という課題が見えてきました。例えば、一般的なデザインツールとして普及しているソフトウェアー アドビ社のIllustrator Photoshop に搭載されている CUD 疑似変換機能の操作実演を行った際、機能の存在自体を知らない人が多いことが分かりました。また、アンケート Q4 の結果では、「CUD について学ぶ機会がない」「実施したとしても、その方法が適切か否か確認する術がない」という人が参加者の 80%いました。他にもアンケート Q5 の結果では、「CUD の実践事例紹介」や「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットを使った実践練習」「色弱者の見え方(当事者による講演)」をワークショップやセミナーで取り上げてほしいなど、色弱者理解、CUD 手法習得を望む人が多くいました。
このようなことから、デザインの作り手側のより多くの人に、CUD に関する分かりやすく正しい情報の供給が急務であり、引き続き直感的に理解することができる体験型ワークショップを充実させる必要があると考え、これを実践し、その後のフォローとして学術性主体のセミナーの開催を目指していきたいと思います。
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