令和5年度 (2023年度)「カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業」事業実施報告

今回で第4弾となる2023年度愛知県委託事業であるカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座を実施しました。

概要

事業名 カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座
委託者 愛知県(福祉局福祉部障害福祉課)
実施講座 実施日時 実施会場 参加人数
計94人
2023年12月7日(木) 13:00~15:00 豊田市役所 東大会議室4 18人
2024年1月9日(火) 14:00~16:00 日進市役所 庁舎内会議室 19人
2024年1月16日(火) 14:00~16:00 知多市役所 多目的会議室 20人
2024年1月18日(木) 13:30~15:30 長久手市役所 会議室 19人
2024年2月14日(水) 14:00~16:00 尾張旭市役所 3階講堂1・2 18人
講師
  • 富永さかえ(第一部:講義担当)
  • 林羊歯代(第二部:ワークショップ担当)
  • 井原直将、片岡晴彦、近藤康一、近藤俊郎(色弱当事者スタッフ)
目的 出前講座による講義とワークショップを通して色覚の多様性について理解を深め、カラーユニバーサルデザイン(以下「CUD」と称す)の必要性を認識するとともに、その普及促進を目的とする。
内容

講座は第一部の講義と第二部のワークショップで構成されている(各60分で計2時間)。


○ 第一部:講義「色覚の多様性とCUDの基本的な知識を伝える」(5会場共通)

  1. 色覚の多様性について
  2. 色弱者の見え方の特徴(当事者による解説)
  3. 色弱模擬フィルタ(バリアントール)をかけて50色の色紙を5種類に分けるワーク(色の見分けにくさの体験)
  4. CUDの事例および具体的手法

○ 第二部:ワークショップ(選択制プログラム)

  • プログラムA:受講者が持参した印刷物のチェック
  • プログラムB:受講者から提案されたCUD的課題をめぐるディスカッション
  • プログラムC:市役所(研修所)館内のCUDチェック
  • プログラムD:CUDの知識とスキルをいかに他者に伝えるかを学ぶワーク
  • プログラムE:ロールプレイで学ぶ色に頼らないコミュニケーション
  • プログラムF:Officeツールを用いたCUD対応文書作成ワーク
    ※上記6つのプログラムから、実際には3市がプログラムA、1市がプログラムD、1市がプログラムFを選択した。

○ ワークシートとアンケートの記入および講座のまとめ

まとめ

カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業について

本事業は、誰に対しても見やすく分かりやすいデザインの普及を目指し、色覚の多様性とCUDについての知識と理解を深めることを目的として、愛知県が企画した委託事業です。今回はカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第4弾となります。

2018年2月に県の福祉局福祉部障害福祉課が「すべての人にやさしい情報を届けよう――視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」を発行し(https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/3456.html)、それを機に2018年2~3月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及セミナー(岡崎市、名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20180228/)が、次いで2018年12月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及ワークショップ(名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20181217/)、そして2019年10~12月にはカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第1弾として、愛知県内の小中学校5校の教職員を対象に「学校のカラーユニバーサルデザイン推進支援講座」(半田市、東栄町、愛西市、豊田市、刈谷市)が実施されました(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20200315-aichi2019/)。

第2弾以降の対象者は、公募によって選定された市役所職員の方々です。

2021年度は岡崎市、豊田市、西尾市、北名古屋市と犬山市から計153人の参加がありました。(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20220815-aichi-caravan2021/

2022年度は刈谷市、あま市、春日井市、豊川市の他、愛知県職員の方も含め、幅広い部署から計122人の参加がありました。(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20230903-aichi-caravan2022/

そして2023年度は豊田市、日進市、知多市、長久手市、尾張旭市から計94人の参加となりました。

講座内容

講座は、講義とワークショップの二部構成です(各60分、講座の様子については、添付資料「CUD推進支援講座2023_記録写真(PDF、約1.2MB)」を参照)。

前半の講義では、色が見えるしくみ、色覚の多様性とCUDの実践的な手法についてスライドを示しながら解説しました。講義のなかほどに、色弱模擬フィルタ(バリアントール)を用いて色紙を5つに分類し、色の見分けにくさを実体験するワークと、さらに色覚タイプの異なる色弱当事者2人(P型強度とD型強度)の談話を入れることで、CUDの必要性を実感できるように工夫しています。今回ひじょうに有効だったのは、当事者2人が参加者と同時に行った色紙の分類結果を、皆でしっかり見てディスカッションする時間を設けたことです。当事者への素朴な質問も多く出され、見え方の理解が深まったようでした。

参考資料としては、参加者全員に愛知県障害福祉課発行の「すべての人にやさしい情報を届けよう—視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」と「カラーユニバーサルデザイン推奨配色セットガイドブック(第2版)」等を例年通り配付。さらに講義で映写するスライドは事前にPDFファイルとして参加者に配信し、講座当日は各自治体で用意された印刷版も配付しました(データの事前配信と参加者全員への紙媒体での配付は、昨年度アンケート調査で要望が多かったこともあり、今年度より実施することにしました)。

後半のワークショップは6つのプログラムからの選択制で、豊田市がプログラムF:Officeツールを用いたCUD対応文書作成ワーク、日進市がプログラムD:CUDの知識とスキルをいかに他者に伝えるかを学ぶワーク、その他の3市がプログラムA:受講者が持参した印刷物のチェックを選択しました。

プログラムFでは、受講者がPowerPointで、学習用ファイルを使って折れ線グラフやチラシの色づかいを見分けやすいものに変更し、結果をCUDチェックツール(「色のシミュレータ」WEB版)で確認する過程を体験してもらいました。インターネット環境およびデバイス利用制限の問題があり、PC使用のプログラムはややハードルが高いプログラムですが、推奨配色セットに従った色指定やチェックツールの使い方を知ってもらうには有効なプログラムだと言えます。

プログラムDでは、3~4人のグループに分かれ、1人が教師役となってCUDの知識を他者に伝え、他の聴き役が教師役の説明の仕方や内容を評価するワークを行いました。講座前半で学んだ説明を理解していないとアウトプットするのは難しいものですが、独自の比喩や事例を加えながら丁寧に順序立てて説明する姿が多く見られました。

3市が実施したプログラムAでは、受講者が自ら作成・発行した印刷物(広報誌やイベントのチラシ、ポスター、公共施設のリーフレット、防災関連マップ、ごみカレンダー等)をグループに分かれて見直し、改善すべき点などをまとめてもらいました。CUDチェックツールで確認したり、当事者や講師と意見を交わしたりしながら熱心に討論する姿が見られ、参考になったとの声が多くありました。

評価

講座に対する評価は、講座終了時に実施したアンケート結果から、5会場すべて概ね良好でした(添付資料「2023CUD推進支援講座アンケート集計結果報告(PDF、約870KB)」参照)。「今回の推進講座は、あなたにとって有益でしたか」に対し、「ひじょうに有益だった」の回答は92人中83人(約90%)、「まあまあ有益だった」は8人(約9%)、「普通」はゼロ、「あまり有益ではなかった」は1人(約1%)、「意味がなかった」はゼロでした。「あまり有益ではなかった」とした回答者は豊田市の受講者であり、これはワークショップでインターネットに接続できずワークに着手できないまま時間切れとなった方の回答ではないかと思われます。

このように高い評価を得た理由は、わかりやすい講義、色弱模擬フィルタ(バリアントール)による色弱者の色の見分けにくさの疑似体験と色弱当時者との直接対話による気づきの大きさにあると思われます。特に色弱当事者との交流については、これまで意識しなかった課題に気づくことができたし、色の見え方について具体的な話が聞けてひじょうに勉強になったとの声を多くいただきました。具体的にどういった声があったかについては、「3.参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)」をご覧ください。

リフレクション

われわれ講座実施者は、毎回講座を終えると振り返りを行って次回の改善に努めています。そこで出た感想・意見を3つ紹介します。

  • 受講者の多くが、過去3回のキャラバン隊事業と同様に、CUDの基礎を十分に理解され、誰にとってもわかりやすい資料を作りたいという思いを新たにされたように感じた。文字と背景の色に明度差をつける、文字サイズを大きく、太いフォントを使用する等、既に見えやすさに配慮して資料作りをされている方も多くおり、そこにCUDの確かな知識を今回の講座によって加えていただくことで、自治体が発する視覚情報のCUD化は着実に進んでいくと感じた。
  • ワークショップのプログラムを今回は6つ用意した(前年度は2つ)。自治体それぞれの要望にきめ細かに応えるためであったが、集客(受講への応募)に繋がることを期待してのラインナップ拡充でもあった。今回選択されたのは6つのうち3つだが、それによって上記の効果があったかどうかは判断できない。これに関連し、本事業の主催者(福祉局福祉部障害福祉課)が集客に苦労されたと伺った。参加者総数が昨年から28人減で8割弱であったことも残念に思う。講座の対象を自治体職員に限定せず、もっと広く募ることも必要かもしれない。わたしたちが募集段階から関与できるような連携体制を築き、集客方法を考えていきたい。
  • ある自治体担当者から、講義のスライド資料がひじょうにわかりやすかったので、講座に参加しなかった職員にも配信したいとの要望があった。スライド資料は、講座に参加した方が講義の補助資料として見ることを前提に作成したものであり、それだけで完結した情報を掲載しているわけではないため、扱いには慎重さが必要。今後は、独立したCUDガイドブックかリーフレットを作成し、講義用に限定せず配布・配信できるとよいと思う。

参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)

アンケートの問5「その他の感想(本日特に印象に残ったこと、疑問をもたれたこと、今後どのような講座があればよいか等、自由にお書きください)」に対し、今回も多くの感想や意見が寄せられました。会場ごとにほぼすべての記述を掲載した報告書を添付していますので、ぜひそちらもご覧ください(添付資料「2023CUD推進支援講座アンケート集計結果報告(PDF、約870KB)」参照)。 以下に、寄せられた感想の中から、講座の内容や受講者の反応がよく伝わるものをいくつか紹介し、まとめといたします。

  • 実際に自分で使っているチラシをCUDチェックすることで、どのような問題があったかなど学ぶことができてほんとうによかった。
  • 色弱の場合の色の見分けにくさを体感することができてよかった。見え方のチェックツールを紹介いただけたので、今後の業務に活用したい。“色にたよらない表現”という言葉も印象に残った。意識して広報物の作成をしたい。
  • 以前に障害福祉の分野に携わっていたため、少し知っていることはあったものの、実際に色弱者の方の視界を体験したり、話を聞いたことで普段の業務等で配慮が足りていなかったことが分かった。当事者の実体験を聞くことができて良かった。
  • 今回研修で学んだ内容を子どもたちに伝え、世の中に浸透することが重要だと感じました。
  • 色覚の多様性について、色の見分けがつきにくい方の人数が想像よりもかなり多いことを知り、CUDの重要性について大きな気づきがありました。日常の情報表示はかなりの部分について色に頼っている印象で、単なる生活の不便にとどまらず、例えば災害時などには生死を分けることも想定できます。行政は重要度の高い情報伝達を担う機関でもあるため、CUDに対する関心と理解に加え、具体的な取組みが強く要請されるのではないかと感じた。
  • 自治体でのカラーユニバーサルデザインの推進率がどの程度あるのか気になります。推進している自治体はチェック体制をどのようにしているのでしょうか。
  • バリアントールで色紙を5分類する体験はとても面白く勉強になりました。私は高齢者向けの印刷物をつくることが多く,これまでの白黒でも見やすいように意識してきましたが,白内障の方や色弱の方にとってもわかりやすいものとなるよう色の濃淡をつけてコントラストをはっきりするように気をつけたいと思いました。

資料ダウンロード

以上 (2024年8月19日作成)

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