第13回CUD勉強会『21世紀の新しい「色覚観」。そして、違いを楽しむ社会を築くために』

作家川端裕人氏をお招きしました。川端氏は、昨年10月に『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020年代の「色覚」原論』を上梓されました。内外の先端技術や色覚検査に関する資料収集、多数のインタビュー・調査により導き出した色覚の問題と世界観を語っていただきました。

概要

イベント名称 第13回CUD勉強会『21世紀の新しい「色覚観」。そして、違いを楽しむ社会を築くために』
実施日 2021年7月25日(日) 14:00-16:00
方法 zoom オンライン方式
主催 NPO人にやさしい色づかいをすすめる会
講師 川端裕人(かわばたひろと)氏(作家)
対象 人にやさしい色づかいをすすめる会会員、カラーユニバーサルデザインや色覚多様性について興味・関心をお持ちの方
参加費 無料
参加者 57名
内容

話題1

  • 生き物の色覚が多様性であることを理解する
    ヒトへの進化の過程における色覚の変化―鳥類等(4錐体)→哺乳類(2錐体)→霊長類(3 錐体)を進化生物学的な知見により解説
  • ヒトの色覚が多様だと理解する
    1. ヒトは、同じ種の中に違う色覚タイプ(2錐体タイプと3錐体タイプ)を持つ珍しい種であるとの紹介および、ヒトはなぜ色覚多様性を獲得したかの研究紹介(東京大学河村正二研究室)
    2. 色覚多様性の概念(2017 年日本遺伝学会提唱) 
    3. 新しい情報として、ヒトの色覚は多様なだけでなく連続的であると紹介(2010 年代になってアメリカ、イギリスで開発されたコンピュータによる新検査データ)

話題 2

  • 多様性との付き合い方 20 世紀バージョン 優性思想と色盲(色覚異常)・優生学上の見地から優性思想の対象として正当化されていた時代 
  • 多様性との付き合い方、これからのこと 多様性を認め合い理解し楽しむ(技術の活用-色のシミュレータ・色のめがね等)、カラーユニバーサルデザインの導入(2色覚・3色覚の両者が見やすい色のデザイン)の時代へ
講師プロフィール 川端裕人(かわばたひろと) 作家
主な著書として、ノンフィクションに、『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020 年代の「色覚」原論』『我々はなぜ我々だけなのかアジアから消えた多様な「人類」たち』など。小説に『空よりも遠く、のびやかに』『銀河のワールドカップ』『エピデミック』など。
講師からのメッセージ 21 世紀になったこの20年で「色覚」めぐる研究が進んでいます。例えば、ヒトは、同じ種の中に様々な色の見方が共存する生き物で、眼科で診断される「先天色覚異常」も「異常」ではなく進化の中で培われたかけがえないものだと分かってきました。また、様々な色覚タイプの間は連続しており、境界はありません。そんな中、どんなふうにお互いに理解し合い、「違いを楽しむ」ことができる社会を作り得るのか考えましょう。

まとめ

愛知県でカラーユニバーサルデザイン(CUD)をひろめる活動をしている私たちNPO人にやさしい色づかいをすすめる会は、CUDについて、関係する各界の専門家にわかりやすく語っていただく講演会を企画してきました。今回は作家川端裕人氏をお招きしました。川端氏が上梓されました、『「色のふしぎ」と不思議な社会 2020 年代の「色覚」原論』(発行:2020 年 10 月)は、発行当時から多くの反響を呼んでいます。この著書は、内外の先端技術や色覚検査に関する資料収集、多数のインタビュー・調査により導き出された色覚の問題と世界観が詰まったものであり、今回はこの中から、講師自ら「楽しめの話」として紹介のうえ、語られた内容でした。

テーマは、『21 世紀の新しい「色覚観」。そして、違いを楽しむ社会を築くために』。話題1では、進化生物学的な専門分野のお話でしたが、豊富なスライド画像と共に解説された、鳥、魚、チンパンジーなどが持つ色覚の具体例は、丁寧で分かりやすく、関心をもって楽しめる内容でした。また、ヒトの色覚は多様なだけでなく連続的であるとされた場面では、2010 年代になって各国で開発されたコンピュータによる新検査方法が紹介されました。その検査データは、エビデンスに基づく最新情報であり、色覚は正常、異常に分けられるものではないと、改めて証明する大変興味深いものでした。続いて話題2では、多様性との付き合い方 20世紀バージョンで、色覚異常(医学用語/2004 年以前)が優生学上の見地から、優性思想の対象として正当化されていたことについて語られましたが、参加者の中にはこうした歴史の認識がなかった方も多いかもしれません。最後に、多様性とのこれからの付き合い方として、多様性を認め合い、理解し、誰もが色覚を楽しめる兆しが紹介されました。色覚シミュレーション技術の普及、カラーユニバーサルデザインの導入、各自の色覚タイプを語って楽しむ SNS の存在など、今後の希望に繋がるもので、「楽しめの話」として聴ける要素が多くありました。色覚や CUD の初心者には豊富な知識を得る機会、既に関りのある方には、知識のバージョンアップとなったのではないでしょうか。オンライン開催により、地域を超えて参加いただけた勉強会でもありました。

アンケートには参加者57人のうち33人が回答(回答率 58%)、この中で、Q6「勉強会はどのくらい有意義だと感じましたか?」について、「ひじょうに有意義だった」「有意義だった」が 97%を占め、高い評価をいただきました。また、Q4「勉強会の運営はいかがでしたか?」についても、「おおいに満足」「満足」が「ZOOM での開催形式」88%、「参加申し込み後の案内」94%、「時間設定」82%を占める結果となり、運営が順調であったと評価していただきました。とは言え、「時間設定」については、参加者の発言時間の確保など、今後に課題が残りました。その他の結果については、全体のアンケート集計報告を PDF にて添付しておりますのでご覧ください。今回 Q7「勉強会についてどのように感じましたか。」Q8「主催者または講師に対するご質問、ご意見、ご要望等」の自由記述欄にはひじょうに多くの記載をいただいております。中でも、講師のお話は「とても分かりやすかった」「興味深い内容がたくさんあった」「勉強になった」「理解が深まった」「新たな学びがあった」などの感想が目立ちました。また、それだけに留まらず、「もっと知識を深めたい」「もう少し知りたい。」「当事者の話も聞きたいという思いがでてきた」「色覚のことをもっと学んでみたい」等、川端氏の講演を機に色覚の多様性について今後も関心を持ち続けたいという、皆様の意欲を示す記述も多くありました。ありがたいことです。

人にやさしい色づかいをすすめる会は、川端裕人氏を再度お招きして、座談会を開催(2021/09/25 会員限定)いたします。今回の勉強会の内容を掘り下げながら、CUD の必要性や可能性について意見交換する予定です。

最後になりましたが、参加いただきました皆様、開催にあたりご協力いただきました全ての皆様 に感謝し、御礼申し上げます。

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