令和6年度 (2024年度)「カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業」事業実施報告

今回で第5弾となる2024年度愛知県委託事業であるカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座を実施しました。

概要

事業名 カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業――カラーユニバーサルデザイン推進支援講座
委託者 愛知県(福祉局福祉部障害福祉課)
実施講座 実施日時 実施会場 参加人数
2025年1月16日(木) 13:30~15:30 長久手市役所研修室 15
2025年1月29日(水) 15:00~17:00 刈谷市保健センター3階講座室 28
2025年2月04日(火) 14:00~16:00 武豊町役場2階第3・4会議室 19
※ 総参加人数:62人
講師
  • 富永さかえ(第一部:講義担当)
  • 林羊歯代(第二部:ワークショップ担当)
  • 石川裕一,片岡晴彦,近藤俊郎(色弱当事者スタッフ)
目的 出前講座による講義とワークショップを通して色覚の多様性について理解を深め、カラーユニバーサルデザイン(以下「CUD」と称す)の必要性を認識するとともに、その普及促進を目的とする。
内容

講座は第一部の講義と第二部のワークショップで構成されている(各60分で計2時間)。


○ 第一部:講義「色覚の多様性とCUDの基本的な知識を伝える」(3会場共通)

  1. 色覚の多様性について
  2. 色弱者の見え方の特徴(当事者による解説)
  3. 色弱模擬フィルタ(バリアントール)をかけて50色の色紙を5種類に分けるワーク(色の見分けにくさの体験)
  4. CUDの事例および具体的手法

○ 第二部:ワークショップ(選択制プログラム)

 以下4つのプログラムから1つを選択する。

  • プログラムA:受講者が持参した印刷物のチェック
  • プログラムB:受講者から提案されたCUD的課題をめぐるディスカッション
  • プログラムC:市役所(研修所)館内のCUDチェック
  • プログラムD:Officeツールを用いたCUD対応文書作成ワーク
    ※今回は3市いずれもプログラムAを選択した。

○ ワークシートとアンケートの記入および講座のまとめ

まとめ

カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業について

本事業は、誰に対しても見やすく分かりやすいデザインの普及を目指し、色覚の多様性とCUDについての知識と理解を深めることを目的として、愛知県が企画した委託事業です。今回はカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第5弾となります。

2018年2月に県の福祉局福祉部障害福祉課が「すべての人にやさしい情報を届けよう――視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」を発行し(https://www.pref.aichi.jp/soshiki/shogai/3456.html)、それを機に2018年2~3月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及セミナー(岡崎市、名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20180228/)が、次いで2018年12月には愛知県カラーユニバーサルデザイン普及ワークショップ(名古屋市)(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20181217/)、そして2019年10~12月にはカラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業の第1弾として、愛知県内の小中学校5校の教職員を対象に「学校のカラーユニバーサルデザイン推進支援講座」(半田市、東栄町、愛西市、豊田市、刈谷市)が実施されました(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20200315-aichi2019/)。

第2弾以降の対象者は、公募によって選定された市役所職員の方々です。

2021年度は岡崎市、豊田市、西尾市、北名古屋市と犬山市から計153人の参加がありました。(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20220815-aichi-caravan2021/

2022年度は刈谷市、あま市、春日井市、豊川市の他、愛知県職員の方も含め、幅広い部署から計122人の参加がありました。(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20230903-aichi-caravan2022/

2023年度は豊田市、日進市、知多市、長久手市、尾張旭市から計94人の参加がありました。(https://cud.nagoya/event/reports/municipality/p20230331-aichi-caravan2023/

そして2024年度は長久手市、刈谷市、武豊町から計62人の参加となりました。

講座内容

講座は、講義とワークショップの二部構成です(各60分、講座の様子については、添付資料「CUD推進支援講座2024_記録写真」を参照)。

前半の講義では、色が見えるしくみ、色覚の多様性とCUDの実践的な手法についてスライドを示しながら解説します。講義のなかほどで、色覚タイプの異なる色弱当事者2人(P型強度とD型強度)の談話や、色弱模擬フィルタ(バリアントール)を装着した状態で色紙を5つに分類し、色の見分けにくさを実体験するワークを挟み、CUDの必要性をより実感できるようにしています。ワークでは、当事者2人が参加者と同時に色紙を分類し、その結果を見ながら全員で見え方の特徴を話し合う時間も確保します。この時間は、色覚タイプへの関心と理解を深める有効な時間となっているようです。

参考資料として、参加者全員に愛知県障害福祉課発行の「すべての人にやさしい情報を届けよう—視覚情報のユニバーサルデザインガイドブック」等を例年通り配付。さらに講義で映写するスライドは事前にPDFファイルとして参加者に配信し、講座当日は各自治体で用意された印刷版も配付しました。最近は手元のPCで事前にダウンロードしたスライドを見ながら聴講する参加者も増えてきました。スクリーンに投影された画像より鮮明で、プロジェクタの演色性が低い場合、有効だと感じます。

後半のワークショップは4つのプログラムからの選択制で、3市いずれもプログラムA:「受講者が持参した印刷物のチェック」を選択しました。このプログラムでは、受講者が自ら作成・発行した印刷物(広報誌やイベントのチラシ、ポスター、公共施設のリーフレット、防災関連マップ、ごみカレンダー等)を5人程のグループでCUDの視点から課題はないかをチェックして改善すべき点を話し合い、最後に皆で気づきを共有します。今回は印刷物だけではなく、ウェブサイトやSNSで配信するデジタルコンテンツもチェックの対象となりました。

この時間はわれわれ講師と色弱当事者も話し合いに参加します。CUDチェックツールで確認もできますが、当事者にどう見えるかを直接問えるのがこの講座の特徴でもあり、熱心に耳を傾ける姿が今回も多く見られました。

評価

講座に対する評価は、講座終了時に実施したアンケート結果が示す通り、3会場すべてひじょうに高いものでした(添付資料「2024CUD推進支援講座アンケート集計結果報告」参照)。「今回の推進講座は、あなたにとって有益でしたか」という問に対し、56人中55人(約98%)が「ひじょうに有益だった」と回答しています(アンケート回収率は90%)。また講座の長さ(2時間)についても、56人中53人(約95%)が「ちょうどよかった」とし、自由記述においてもこのように高い評価を得た理由は、わかりやすい講義、色弱模擬フィルタ(バリアントール)による色弱者の色の見分けにくさの疑似体験と色弱当時者との直接対話による気づきの大きさにあると思われます。特に色弱当事者との交流については、これまで意識しなかった課題に気づくことができたし、色の見え方について具体的な話が聞けてひじょうに勉強になったとの声を多くいただきました。具体的にどういった声があったかについては、後述「参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)」をご覧ください。

リフレクション(受講自治体数の減少について)

例年通り5会場での実施を想定していましたが、参加申込があったのは上述の3市町のみで、受講者数が昨年度の94人から7割弱の62人に減少しました。参加申込が減った理由は、本事業を主催する愛知県障害福祉課の担当者が昨年(2024)愛知県54市町村を対象に独自に行った、CUDの現状と本講座に関するアンケート調査から明らかになりました。2024年度事業に参加しない理由として多かったのは、「出席者が集まらない」、「募集期間が短い」、「会議室等がおさえられない」の3つであり、その他に「以前講座に参加したことがあるため、今回は参加しなかった」、「すでに(CUDが)普及している」、「人員不足のため、講座に出向くことができない」、「講座があることを知らなかった」等もありました。そして、どうしたら参加するかの問に、「少人数(10人程度)でも可とする」、「募集、派遣先決定を早く」、「募集期間を長くする」との回答が多かったことで、改善策が見えてきました。残念ながらここで愛知県のアンケート調査結果を公表することはできませんが、結果を受けて次回(つまり2025年度)の本事業では、募集開始時期の前倒しと期間延長、講座内容のわかりやすいチラシ作成、そしてオンデマンド教材(動画)作成を行っています。

その他、リフレクションとして愛知県障害福祉課に提出した事業実施報告書に、講座担当者の感想・まとめを①感想・意見一般、②良かった点、③改善すべき点に分けて記述していますので、添付資料「令和6年度カラーユニバーサル普及キャラバン隊事業 事業実施報告書」もぜひご覧ください。

参加者の感想(アンケート自由記述抜粋)

アンケートの問5「その他の感想(本日特に印象に残ったこと、疑問をもたれたこと、今後どのような講座があればよいか等、自由にお書きください)」に対し、今回も多くの感想や意見が寄せられました。講座で得た知識を仕事に活かしたいとの声が大半です。会場ごとにほぼすべての記述を掲載した報告書を添付していますので、ぜひそちらもご覧ください(添付資料「2024CUD推進支援講座アンケート集計結果報告」参照)。 以下にいくつか紹介し、まとめといたします。

  • 今までこのような講習を受講したことがなかったので,とても勉強になった。外注,手作り含め,1年間に多くのチラシ等を発行・配布するので,作成の際には今回の講習で学んだことや気付きを生かし,誰にでも見やすい刊行物となるよう配慮したい。色弱の当事者の方のお話がうかがえたことはとても良かった。また同様の講習があれば参加したい。
  • 自身が作成したものを持ち寄って,具体的に改善点などを見つけることができてよかったです。中にはすぐに直せるものもあったので,改善してより良いものをつくることができるといいなと思いました。
  • ハザードマップ作成時にアプリを使って長時間かけて色を決めましたが,今日の講座で意識すべき点についてとても参考になりました。また現状ハザードマップの課題をグループで共有し,講師の方にご意見いただいたことで今後の修正に活かすことができると思います。
  • 以前の所属で作った報告書でCUDを意識したことがあった。このように以前の仕事のことがありましたので,意識していたと思っていましたが,まだまだ理解が全く不足していたことを痛感しました。紙の色については目からウロコでした。「ピンクの用紙の〇ページの通り・・・」とか,「水色の封筒に・・・」などと日常的に使っており,これはすぐに改善したいと思いました。C型もD型もP型も皆が見やすい判断しやすい色づかいを心がけたいと思いました。本当に為になる講義でした。
  • 自分自身が色弱のため,これまで困ることは多々ありましたが,C型の方々がどのように見えていて,どのような意図で配色していたのかを知ることができたことは有意でした。市役所の中にも私と同じように当事者はいると思うので,パンフレット等がCUDに配慮されているかチェックするという役割を担えるのではないかと思いました。

資料ダウンロード

以上 (2025年9月27日作成)

追記

令和7(2025)年度「カラーユニバーサルデザイン普及キャラバン隊事業」事業実施団体として委託されました。案内ページはコチラからご覧ください。
https://cud.nagoya/event/announcement/p20250705-aichi-caravan2025/

こちらからシェアできます
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!